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あの出来事から約二年の歳月が流れた。
二年前と全く変わらなかった身長の所為でラビにからかわれ、髪は降ろすと腰まで伸びた。
その反面、ユウもラビも身長がこの二年で伸びてしまい見上げないと視線も合わせられない。
ユウは仕方ないとしてラビに「ちっちゃいな〜」と頭に手を乗せられることだけが悔しい。
この前もやられて流石に苛ついた俺は隙だらけの腹に今度はパンチをお見舞いしようと心に誓った。
ぶるっ、と肩を押さえながら体を震わしたラビにニヤリと笑みを浮かべる。


「な、なんさ。」
「嫌、別に?」
「今、物騒なこと考えただろ!」
「失礼な。そんなこと考える訳ない………と思う。」
「思うってなんさーー!」
「はは、冗談だよ。」


じとー、と何か言いたげなラビの視線に気付いてないように振る舞って少し前を歩く。
戦闘や調査、イノセンス回収などの任務をあれからかなりの数こなしてきた。
ファインダーと俺だけの時は大変なことになった、と何処か遠い目をして天井を見やる。
俺をあいつは異質だと人の心を持っていない冷徹な奴だと嫌っている奴らは沢山いるのだ。
解ってはいたが、任務に支障を来してしまったのは頂けない。
無事にイノセンスを回収出来たから良かったものの、一歩間違えば全員が死んでいた。


「あ、そーいえばこの前聞いたんだけど教団で最恐コンビってお前らのことらしいさ。」
「……は?」
「……大丈夫か頭。」
「秋羅酷いさ!」


いつからそんな噂が流れたのだろうか。
確かに任務として行く際に一番一緒に組まされたのはユウだった。
コムイに聞いた時も任務遂行率が一番高く終わるのも早いと言われた。
それが広まって最恐コンビだと言われているのか、他の理由があるのか。


「最恐?…ああ。そういうことね…」
「?」


教団内にいる奴らの大半は俺のことを異質なものを見る目を向けてくる。
それは仕方のないことだ。
人は自分とは違う者の対して嫌悪感を顕にする。
だからこそ、何故俺に対してのコムイたちの態度が変わらないのかが不思議で仕方なかった。
眩しい奴らの中にいてそれが俺を使うための嘘ではないと信じられるようになった。


「まだ全部を信じたわけじゃないが…」
「?…何か言ったさ?」
「嫌、何でもないよ。」


この先もずっと先も笑顔で心を隠すのは当たり前になるだろう。
悲しいことも辛いことも泣きそうな時も戦いが終わるまで笑みを浮かべ続けよう。
それがこの先は必要になってくるはずた。
もうすぐ神の使徒対千年伯爵側との戦いが始まる。
もう立ち止まってはいられない。
俺にはやることが出来た。


「お〜い!神田!秋羅!急いで室長室に向かってくれ。任務らしいぞ!!」


リーバーからの呼び出しの声に隣で黙々と歩いていたユウに視線を向ける。
オレも行きたかったさ〜、と呟いてラビの言葉は聞かなかったことにした。


「……行くぞ。」
「ん、ああ。」
「気を付けて行ってくるさ〜」


それはいつもの朝の鍛練を終え食堂に向かっている途中。
俺は俺の信じた道を歩く、そう心に誓いを立ててまだ朝早い教団の廊下を歩きだした。

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あきゅろす。
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