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はぁ はぁ はぁっ

先程から辛そうに、だが、確実に歩みを進めるリナリーに秋羅は「スッ」と目を細めた。


((……ダークブーツは、リナリーにとって…))
「大丈夫さ?リナリー」


ラビの言葉に秋羅は「ハッ」と顔をあげると、リナリーへと視線を戻す。
アレンはリナリーを気づかい、足を止めた。


「足、痛むんじゃないですか?」
「大丈夫、歩ける。って言っても、アレンくんの手に引かれてるから、えらそうに言えないんだけど」
「いえいえ、全然構いませんよ。」


「ニッコリ」と微笑んだアレンに対して、ラビは「ニヤリ」と笑みを深くした。
もちろん、何かを企んでいるようなそんな笑み。


「コムイにバレたら、大目玉さ。ティムキャンピーがどっか行っててよかったな〜、アレン。」
「ま、そうだよなぁ。月もいないことだし。」
「はは…、どこ行ったんでしょうね〜、二匹とも…」


顔を引きつらせて汗をダラダラ流しながら、必死に言葉を発したアレン。
もしコムイにバレたら、血祭りだけではすまないだろう。
「ホントによかった」とアレンは心の中で思った。


「オレも前に行きたいさ〜、交代してv」
「下心ミエミエですよ、ラビ。」


そんな中、考えるようにリナリーは顔を伏せた。


「絶対、みんなで一緒に教団に帰ります」
「諦めてません。あがいて、あがいて、絶対 全部、守ってやるって思ってます。」


先程の言葉を思い出して「ぎゅう…」と意識の内にリナリーはアレンの手を握り締める。
アレンくん。
戻ってきてからなんだか強くなったね…
私は自分がこんなに弱いと思ってなかった。
イノセンスが扱えなくなって不安で、怖くて。
私、さっき最低なこと考えた。


「…リナリー?」


アレンがリナリーに問い掛けるが、リナリーは気付かなかったようで「ぎゅっ」と目を閉じた。


ドク…

私は…、さっき

ドクンッ





ドクンッ

最低なことを…









最低の“未来”を…

酷い怪我を負い、血溜まりの中で倒れている仲間たち。
残っているのは
私だけ…

ダメ…ッ、
そんなこと考えちゃダメ。

心まで戦えなくなるのはダメ

でないと闇につけ入られる。
信じなくちゃ、もっと。
もっと。


「だからこそ願うんだろ?幸せを…、戦いの終わりを。」


秋羅くん。
秋羅くんはあの時どんな想いで言ってたのかな。


「強くなれ、肉体だけではなく、心まで強く。」


私も秋羅くんみたいに強くなれるかな。
ううん、違うよね。
強くならなくちゃ。


「強く…、頑張らなきゃ」

「「“がんばる”?」」


?を浮かべるアレンとラビにリナリーは思わず口に出してしまったと「はっ」と我に返った。
だが、もう遅い。


「やっぱり、足 無理してるでしょ、リナリー!」
「ち、ちがうの考え事!教団に帰ったら、すぐに鍛練し直さなきゃって…ッ、その…」
「うへえッ、リナリー、何、真面目なこと考えてんさぁ!?」


「ガァーン」と絶望の色を隠す気もないラビはリナリーに近寄る。
もう、顔面蒼白。
そんな三人に秋羅は苦笑を浮かべるとリナリーの肩に手を乗せた。


「ん、ならラビはどうなんだよ。」
「俺、寝る!寝ますよ、そんなん!!」
「ね、寝てもいいよ、別に」
「誰か、毛布かけといてさ!」
「(……あ、コムイさんの言った通りだ。)」


「全然変わってないな」と嬉しそうに微笑む秋羅の隣で和やかな雰囲気をぶち壊すかのような言ってはいけないことをラビは口にした。
ましてや、年頃の女の子に。


「ダメだな、リナリー。もっと色気のあること言わんと恋人できねェさ!」
「ラビに関係ないでしょ!!」
「失礼ですよ、ラビ!!」
ドゲシッ
「いで!」

ドスッ
「…ぅッ、」


その瞬間、ラビの胸ぐらに掴みかかるリナリー。
続いてアレンの顔への蹴り、秋羅のボディーブローがきれいに決まった。
頭とお腹を押さえながら、ラビはリナリーに向き直ると微かに顔を赤くした。


「か…ッ、関係は…ねェけどさ…」
「?」
「ア、アレンは帰ったら、何すんさ?」


しどろもどろに話を反らすラビに、秋羅は誰にもバレないように吹き出す。
そんなラビの質問にアレンは簡潔に答えた。
「食べます」と。


「ジェリーさんのありとあらゆる料理を全ッッッ部!!」

「(あぁ、やっぱり…)」
「(た、大変…ッ)」
((それでこそ、アレンだな。))

「ぶっ、あはっ、ははははは」


急に笑いだしたチャオジーに秋羅たちは「ポカーン」と呆気にとられた。

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