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落ちる落ちる。
何処までも落ちていく。


「「どわぁあああぁあ
あぁぁあぁι」」

「ぐえ…っ」


秋羅達は何処かの場所にどうやら無事(?)に落ちたようだ。
いや、無事なのは一番上にいるクロウリーとリナリー、始めに落ちたはずなのに何故か無傷の誰かさんだけ。


「ビ…っビックリしたである〜…」
「ちっ」
「ゔぉえ゙え゙えぇっ」
「つっ、潰れ゙る゙ゔーっ」


「あー…みんな大丈夫か?」


団子状態になっている男性陣の一番下には、アレンが必死にリナリーを潰すまいと守っている。
その前には何故かリナリーと一緒に落ちたハズの秋羅は一人無傷のままアレンを覗き込んでいた。


「な、何で秋羅は平気なんですかー!」
「……さあ?」
「って、笑ってないで助けてくださいよー!」


秋羅が無事な理由。
飲み込まれた瞬間、リナリーだけを外に出そうとしてアレンにリナリーを投げたまではよかった。
だが、その後なだれ込むようにみんなが降ってきたため作戦失敗。
仕方なく、リナリーはアレンがしっかりと守ることは分かっていたのでそのままに下に落ちてみたのだった。
秋羅は先程のことを思いだし「はぁ」とため息をはきつつイノセンスを発動。

このままでは埒があかない。

天照で風を起こせば団子状態だったみんなはバラバラに着地した。
とりあえず一番近くにいたユウに手を差し伸べて引っ張り起こす。
「大丈夫か?」と聞けば頷いたユウから視線を外してまずは状況確認。
だが、見渡した場所は何処をどう見たって江戸に来る前にアレンと通った場所に似ている。
否、同じにしか見えない。


「ここ…方舟の中ですよ!」
「なんで、ンな所にいんだよ。」
「知りませんよ。」


「メラッ」と炎が燃え上がり、一触即発の二人の間で秋羅は目を細める。
リナリーの下にいるカボチャに見覚えが。


「おっ、おい!?リナリーの下に変なカボチャがいるさ!!」


秋羅に続きラビも気がついたようだ。
争いをやめたユウとアレンも自然とラビの視線の先に目を向ける。
見事に地面とリナリーの間でペッタンコになったカボチャ――レロは急に顔を真っ青にした。


【はっ。どっ、どけレロ。クソエクソシスト!ぺっ!!】
「……ほぉ?」


何かを企んだように口の端をあげた秋羅はイノセンスに手をかける。
この状況でかなり偉そうな態度。
コイツは今自分の立場が分かっているのだろうか。
はたまた只のバカなのだろうか。
とりあえず一回はっ倒すか、と話していないのにこういう時だけ以心伝心なアレンとユウ。
そこに秋羅も加わって怖さ倍増。
三人は「スッ」と目を光らせた。


「「「お前か…」」」
ジャキンッ


ユウは六幻を、アレンは左手をレロの喉元に突き付ける。
全く動けなくなった真っ青なレロの頭の角らしきものをわし掴みにしながら笑みを浮かべる秋羅の目は全く笑ってない。
自分の置かれた状況を理解したレロは尋常ではない汗を流しながら悲鳴を上げる。
その後ろでラビとクロウリーは自分のことではないのに「さっ」と顔を青くした。
怖すぎる。


「スパンと逝きたくなかったら、ここから出せ。オラ。」
「出口はどこですか。」
「お前だって命を粗末にしたくねェよな?」

【でっ、出口は無いレロ。】

((出口はない?いや…))


まだあるはずだ、と何故か確証があるかのように感じた心。
すると、汗をかきまくっていたレロの汗が急に「ぴたり」と止まり、レロとは違う男の声が聞こえてきた。


「舟は先程長年の役目を終えて停止しましタvごくろう様ですレロv出航ですエクソシスト諸君v」

((……この声は。))

「お前達はこれよりこの舟と共に黄泉へ渡航いたしまぁースv」


レロの口が「カパッ」大きく開くと、中から風船のような千年伯爵が姿を現した。
その言葉と同時に「ドンッ!」と周りの建物が一気に爆発し、地面にもいくつもの亀裂が入っていく。


「危ないですヨv引っ越しが済んだ場所から崩壊が始まりましタv」
「は!?」


ラビがすっとんきょうな声をあげると、ユウと秋羅は「ギリッ」と唇を噛むと伯爵を睨んだ。


「どういうつもりだ…っ」
「お前…」


これはレロに残された映像記録。
ということは伯爵は消えた時点からこの事実を計画していたのだ。
でなければ、あの有利な状況で江戸の町から姿を消すはずがない。


「この舟はまもなく次元の狭間に吸収されて消滅しまスvお前達の科学レベルで分かりやすく言うト……」


全てはリナリーのイノセンスと共に俺たちも消すことが目的。


「あと三時間。それがお前達がこの世界に存在してられる時間でス。」
「……くそっ」


もっとよく考えていれば、この事態を回避出来たかもしれない、なんて今さら後悔しても遅いことは分かっている。
それでも回避出来たかもしれない事態に拳を握りしめた。


「可愛い、お嬢さん…良い仲間を持ちましたネェvこんなにいっぱい来てくれテ…みんながキミと一緒に逝ってくれるかラ淋しくありませんネv」
「伯爵…っ」
「大丈夫…v誰も悲しい思いをしないよう、キミのいなくなった世界の者達の涙も止めてあげますからネv」


風船のように空の彼方に消えていく伯爵に握りしめていた拳をといて考える。


((出口はないと言ったが…))


先ほどから何かを感じる。
伯爵と話していた時から、いやこの方舟にアレンと入った時からずっと。
俺を喚んでいるかのようなそんな違和感。
そしてこの方舟で何か起こる気がする大きな予感。
ここで自分を変える大きな何かがある、そんな気がした。

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