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夜の闇の中で月明かりに映った影はアクマだった。
アクマはその場所を監視するように街の上を移動している。
ココはアクマの密集地帯。
3人の男たち、ユウ、マリ、デイシャはいつの間にか大変な場所に入り込んでいた。
しかもアクマの攻撃により3人はバラバラ。
デイシャのゴーレムからは「ザーザー」とノイズが交じっていて聞き取りにくかった。


「あ?何いってやがる。」
「音悪いなデイシャ。」
「ったくもー。最近調子悪ィじゃんオレの無線ゴーレム。」
「秋羅が言ったように直すべきだったな。」
「やっぱ、そうだよな…」


デイシャのゴーレムを直した方がいいと言った秋羅は「アクマの密集区には入るな。」とも忠告していた。


「お前ら今どこにいる?」


長い時間戦っているようで、3人とも肩で息をしていた。
疲れも溜まっているだろう。


「アクマ達の機械音があちこちで聞こえる…集まろう、10キロ圏内ならゴーレム同士で居場所が辿れる。」


普通のゴーレムは10キロ圏内でなければ居場所が解らない。
だが、秋羅のゴーレム月<ユエ>だけは会ったことのあるゴーレムなら居場所を特定出来た。


ザーじゃあオイラと神田でマリのおっさんとこ集合ってことで。」
「時間は?」
「夜明けまでだ。」


「スラ…」とユウが六幻を構えるとアクマが姿を現す。
だが、マリもデイシャの周りにも凄い数のアクマが大群でいた。
これから長い夜が始まる。







 * * *


ここは何処かのある一室。
ティキはアレンたちと別れた後すぐに伯爵に呼ばれてしまった。
渋々、伯爵についてきたティキがカーテンをくぐるとソコに居たのは女の子。
行儀悪く足を椅子の上におき、膝にテキストを広げていた。
その女の子――ロードの前にあるテーブルの上には教科書が積み上げられていた。


「よぉ、ティッキー。Hola(ハロー)」
「うげ。」


露骨に嫌な顔をしたティキ。
すぐに側まで歩いていきロードに声をかけた。


「何してんのよ?」
「見てわかんねェ?ベンキョォー。」
「学校の宿題、明日までなんですっテv」


ティキがロードの隣に腰を下ろす。
すると、隣で伯爵が「ガリガリ」とテキストに文字を書き始めた。
その額には必勝の文字。
ロードはテキストを広げてティキの前に持ってきた。


「やべェのv手伝ってぇ。」
「ハァ?学無ェんだよオレは。」
「字くらい書けんだろ。」
「今夜は徹夜でスv」
「ねぇチョット、まさかオレ呼んだのって宿題のため?」


ティキの言葉を二人はスルー。
結局、その後ティキはロードの宿題を手伝わされることになる。
だが、少し立つと「スッ」と伯爵がティキの前にカードを出した。


「ひとつめのお仕事vここへ私の使いとして行ってきて欲しいんでスv」
「遠っ」
「まあそう言わずニv」


伯爵は「スッ」とカードの裏からもう一枚カードを出した。
ティキに断ることは出来ないのだろう。


「ふたつめのお仕事vここに記した人物を削除してくださイv」


削除。
その言葉にティキの顔は急に暗くなる。
だが、それは一瞬ですぐに元に戻すと苦笑を浮かべた。


「多っ!了解っス。」


カードを受け取ったティキはそそくさとその場を後にしようと立ち上がった。
ティキはシルクハットを被って顔だけロードに向ける。


「そんじゃ宿題がんばってね。」
「ティッキィー。手伝ってくれてありがとぉ。」
「………家族だからな…」


既に姿が見えなくなったティキの方を見ながら伯爵が呟く。


「ティキぽん…辛いのかナv」
「人間と仲いいレロもんねぇ。」
「んー辛いってゆーかさぁ…怖いんじゃないのぉ。」


一方、ティキは暗い夜道を歩きながら「ふぅ」と大きなため息をつく。
しばらくこっちの生活か、と。
「コツコツ」と靴の音だけが鳴り響いている静かな街。
考え事をすればする程、悪い方へといきそうな暗い空気。
そんな時「ドン」と音がしてティキの目の前の壁が破壊された。
瓦礫の残骸にはアクマのボディと人影。
段々と煙が晴れていけば現れたのは1人のエクソシストだった。


「お?」


今のティキは白ではなく黒。
ユウとマリのゴーレムからはノイズに交ざって声が聞こえてきた。


ザーザザ

殺すザザザ
って
ピーガガッ
楽しガガッ



ザー



「あ?何か言ったか?」
「デイシャ?」


アクマを倒し終えたユウとマリはゴーレムに話し掛ける。
だが、そこから声が聞こえることは2度となかった。

ティキは歩きだした。
気をつけないと戻れなくなっちまう。
失いたくない。


「(だだ…)」


白いオレと黒いオレ。


「(どっちもあるから楽しいんだよ…)」


笑いだすティキのその笑みは狂喜を帯びていた。
「ふ」と顔を上げた視線の先には真っ赤に輝く丸い月。

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