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カウントが進む中「空耳だ。」と目の前で起こっていることに視線を戻す。
すると「どくんっ」と刀が何かに反応して疼いた。


「9レロ。」

【せっかくここまで進化したんですよ?】
[…タ…ケ…]
「!」


先程よりも大きく聞こえた声のようなもの。
やはり誰もいない。
「アクマの声か?」とも思ったが、俺はイノセンスを発動していないと聞こえないのだ。
今、イノセンスは鞘に納まっている。


((何か違和感が…))

【8レロ。】
[…タス、ケ、テ…]
【7レロ。】

「今、のは…!」


聞こえてきた声は哀しくて苦しくて、だけどソコに縛られてしまっている悲しい魂。

出して欲しいと嘆く言葉。
愛して欲しいと紡ぐ口。

これは魂の声?


【6レロ…】
「おい!?一体何を…」
「イノセンスに破壊されずに壊されるアクマってさぁ…例えば自爆とか?」


アレンの言葉を遮って愉しげに笑うロードはわざと遠回しに話していた。


「そういう場合アクマの魂ってダークマターごと消滅するって知ってたぁ?

そしたら救済できないねー!!」
「!」
「やめろ!」


さも破壊することが愉しいと話すロードをアレンとリナリーは睨め付ける。
秋羅は目を見開くと哀しげに龍炎と鏡氷に触れた。


どくんっ!
((!……そういう事か…))

「3レロ…」


秋羅は不愉快とばかりに眉を寄せて堅く拳を握る。
何かを決心したように目を細めるとリナリーの肩に手を置いた。


「リナリー。アレンは任せた…」
「……え?秋羅くん?」


意味が解らず聞き返したリナリーの視界に自爆しようとしているアクマに向かって飛び出したアレンが移る。


「やめろ!!」
「アレンくんダメ!!間に合わないわ!」
【2レロ…】


アレンを止めたリナリーをもう一度見つめると俺は急いで地を蹴った。
早くしなければ間に合わない。
リナリーとアレンが気付かないうちに事を進めなければ。





((お願いだ。イノセンス…))





あの魂を救うために。





今よりも強い力を。





これ以上、アイツを苦しめたくない。





これ以上、アイツらを泣かせたくない。





だが、今のままでは俺はまた同じことを繰り返してしまう。
そんなのはもう嫌なんだ。


【1レロ。】
カチッ!
【ウギャアアアア!】


アクマが悲鳴を上げた瞬間、アレンが驚き目を見開いた。


「秋羅!?」
「……え!?」
「秋羅ーー!!」
ドガァァンッ!


凄い爆発が起こった。
煙が上がってしまい何も見えない。
爆発に巻き込まれたであろう秋羅の姿もアレンたちには見えなかった。
その爆発の中を秋羅はひたすら声の聞こえる方へと向かう。
まるで何かに導かれるように身体は淡い銀色に光り輝いていた。


[……タ、スケテ…]


聞こえる。
魂の声が。





とくんっ

[……イ、タイ…ヨ…]







とくんっ

[……クル、シ…イ…]







とくんっ

[……タ、ス…ケ、テ…]







とくんっ

[タスケテ…!]






俺はこの命を助けたいと思った。






とくんっ








アクマとか兵器だとか人を殺したとは関係ないと思った。








とくんっ









只純粋に助けたい。
そう想ったんだ。







((イノセンスよ…!!))
カッ!






心に反応してイノセンスがひときわ強く光り輝いて、その形状を変えていく。
俺には守りたい者があった。
そして、今は。




どくんっ!

「イノセンス第2解放“神風<シンフウ>”!!」

ゴォオオオオオオッ


秋羅がイノセンスに向かって手を掲げるととても優しく温かい風が吹き抜ける。
だが、それと同時に無情にも「パン」と魂が弾け爆風に秋羅は呑まれてしまった。


「キャハハハハハハハ!!」


ロードは狂ったように笑う。
アレンの呪いが「ズキンッ」と疼き左目から血が流れた。
その身を引き裂くような痛みにアレンは声を上げた。


「あ゙ぁ゙っ!!」
「アレンくん!!」


近寄るリナリーに痛む目を押さえながら、アレンはその手を払うと悔しげに睨み付ける。
僕はあの魂を助けたかった。
なのに魂は弾け飛んで。
秋羅は爆風に呑み込まれてしまった。


「……くっそ…何で止めた!!」
バシッ!
「仲間だからに決まってるでしょ!!それに…っ!」


アレンの頬をおもいっきり叩いたリナリーは悔しげに唇を噛みしめながら静かに涙を流す。
顔を上げたリナリーの表情には「何も出来なかった」「気付けなかった」とただ後悔だけが残っていた。


「それに、秋羅くんは……もう…っ」


いないの。
晴れた漠炎の中には秋羅の姿が見当たらない。

秋羅は死んだ?
秋羅が。


「…っ!!」
「秋羅くん!!秋羅くん!!秋羅くん!!秋羅く…ん…」


目を見開いたアレン。
止めどなく溢れてしまう涙を拭いながら秋羅を呼び続けるリナリー。
アレンの瞳から涙が零れ落ちた。


「……嫌よ。いなくならないで…っ!」


涙が止まらない。
秋羅くんがいなくなったなんて信じられない。
だって、さっきまで一緒にいて私たちと話していたのに。
もう秋羅くんはいない。


「秋羅…」


秋羅がいない。
それが哀しくて苦しい。
頭に血が上って冷静な判断が出来なかったから秋羅の行動に気付けなかった。
秋羅は何時だって僕らの一歩も二歩も先を見ているってしってたのに。
僕は。


「スゴいスゴい!一人は爆発に飛び込んで死んじゃったねぇ〜アンタも予想以上の反応!」
「ッ」


様子を見ていたロードはキャラキャラ無邪気に笑う。
その態度にアレンは涙を拭うこともせずにただ「お前…」とロードを睨め付けた。

僕の
私の


「「(所為だ…)」」


リナリーとアレンは悔しげに唇を噛み締めるとまた静かに涙を流した。

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あきゅろす。
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