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ブルー・デュール
桜 常 編



 おれは慶多や友人たちと一緒に空き教室で味気ない昼食をとり、慶多に質問攻めにされながら四組に戻った。
 すると三人の生徒がおれの前に立ち塞がった。
 クラス委員の三人だ。
 会長の信者はたくさんいるが、クラス委員の連中は公式ファンクラブのようなものだ。
 面倒な仕事が多いのに少しでも会長と繋がっていられるからと、クラス委員はいつでも倍率が高いらしい。

「戸上、お前さっき鳴瀬会長と仲良くしていたみたいだな」

 すらっと細い気の強そうな生徒が言った。
 三人の中でイニシアチブを持っている久河太陽(くがたいよう)だ。
 さすがに情報が早い。
 だが、どうして皆おれが自己紹介していた場面を忘れてしまうのだろう。

「別に、ちょっとこけたから声かけられただけだよ」
「ふーん、それにしては親密そうだったって聞いたけど? 隠しごとはなしだぞ。
俺たちに内緒で抜け駆けしたらどうなるか、わかってるんだろうな」
「ああ」

 三人ともたいして話したこともなかったが、こうも敵意を向けられるとなんだか裏切られた気分にさせられる。
 クラスでくらいまったりと過ごしたいのに。

 おれが席について鞄に財布をしまっていると、三人はなおも詰め寄ってきた。

「本当にわかってんのか? お前は高校から入ってきたから知らないんだろ。
会長に近づきたいならそれ相応の手順を踏めよ。ここではここのルールがあるんだ」
「勝手な真似したら制裁が下るぞ」
「わかったって言ってんだろ。おれは会長とはさっきが初対面、別に近づきたいなんて思ってない」

 これで終わりだとばかりに顔も見ずに冷たく言い放つと、久河はむっとしたようだった。
 そこに慶多がにこにこしながら割りこんできた。

「その辺にしときなって。俺見てたけどあれは事故みたいなもんだったからさ、こいつも気にしてるんだよ。なっ」

 慶多は適当に三人をあしらって解散させた。
 人脈が広く副会長とも仲がいい慶多相手では、久河も強く出られないようだ。
 前の席についた慶多に小さく礼を言うと、慶多は笑っておれの肩を叩いた。

 基本的に生徒会メンバーと会話できるのは、特定の委員会に属する人間だけだ。
 生徒たちによる自立したコミュニティーを形成することがこの学校のモットーなので、
そんな不文律ができたらしい。
 まるでアイドルのような扱いを受ける生徒会が動きやすいよう、手足となるのがその委員会だ。
 秩序を乱す生徒は彼らによって制裁される。
 慶多は副会長の傘下である体育委員なので、人ごみでも気にせず会話できるというわけだ。

 学校の中は素の自分でいられる癒しの場所のはずだった。
 友崇がいるここには連中も手を出してこないだろうし、ようやく手に入れた安全地帯なのに。
 面倒ごとは勘弁してほしい。

 顔がいいだけでちやほやされる自分勝手な生徒会長め。
 いつか目に物見せてやる。


   ◇



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あきゅろす。
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