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ブルー・デュール
桜 常 編

43

 無事コスプレ喫茶に決定し、おおまかな内容と役割分担が決まったところで
ロングホームルームは終了した。
 教室に戻ってきた友崇は、すんなりこの決定に納得していた。
 生徒が生徒なら教師も教師だ。

 続いてショートホームルームに移り、特に連絡事項もなく放課後になった。

「今日は生徒会ないのかー?」慶多が言った。
「当たり前みたいに言うなよ。そもそもおれは生徒会じゃないんだから」
「そうだったっけー」

 慶多の言いたいことももっともだった。
 最近のおれは生徒会メンバーと同じくらい生徒会室に通っている。
 しかし今日は生徒会の仕事はなかった。

 おれは財布と筆記具しか入っていない軽い鞄を肩にさげ、教室を出た。
 廊下は寮に戻る者や部活に向かう者でごった返している。
 騒がしい中をおれはのろのろと歩いた。

 昇降口に向かうルートを外れると、生徒の群れはぱったりと途絶えた。
 家庭科室や美術室が並ぶ実習棟は閑散としている。
 部活で利用する生徒何人かとすれ違ったが、そこを抜けると人影はなくなった。
 おれは誰も見ていないことを確認してから、さっとドアを開けて生徒会室に入った。

 中は電気がついておらず、窓際に鳴瀬が立って外を見下ろしていた。
 空気清浄機のモーター音が低く響いている。
 西日に照らされた鳴瀬の横顔はどこか憂いを帯びていた。
 だが入ってきたおれのほうを向いたときには、昨夜と同じ捕食者の目になっていた。

「どうした、こっちに来い」

 おれがいつまでも入り口付近で突っ立っているので、鳴瀬は笑って手を差しのべた。
 それでも動かないのを見ると、焦れて向こうから歩み寄ってきた。
 伸ばされた腕を避けようと身をよじると、肘がドアに当たって派手な音がした。

「馬鹿、誰かに聞かれたらどうするんだよ」

 鳴瀬は強引におれの腕をとって、左手でドアに鍵をかけた。
 そのままおれは部屋の奥に連れていかれ、鳴瀬のデスクの上に座らされた。
 おれが肩に引っかけていた鞄を、鳴瀬は壊れものでも扱うかのようにゆっくり腕から抜いて床に置いた。
 そこには鳴瀬の鞄も無造作に置かれていた。

「約束通り来たんだから、お前のこと教えろよ」

 おれは感情を押し殺して呟くように言った。
 鳴瀬はそれには答えず、おれにかぶさるようにデスクに両手をついた。
 目の前の鳴瀬のシャツから鎖骨が覗いて見える。

「……なんとか言え」
「わかってるって、これからゆっくり教えてやるよ」

 鳴瀬の手がおれのボタンを留めていなかったブレザーの襟ぐりをつかんだ。
 ブレザーは簡単に肩から滑り落ちて、デスクについている両手にひっかかった。
 無理やり手首からブレザーを引き抜かれると、重心をかけていた手が滑って肩甲骨をデスクにぶつけた。
 仰向けになったのをいいことに、鳴瀬はおれの上に乗りかかって動きを封じた。

「どけよっ」

 鳴瀬の肩を押した手は頭上で固定され、罰だとばかりに骨が鳴りそうなほど握られた。
 痛みに顔をゆがめると、鳴瀬は目を細めて薄ら暗い笑いを浮かべた。

「秘密を共有する仲なんだし、もうひとつくらい秘密を作っておいてもいいだろ?
あんまり暴れると優しくしてやらねえぞ」
「お前が優しいときなんかあったかよ……つうかどけって! なにすんだよっ」

 鳴瀬はおれのネクタイを抜くと、シャツのボタンを上から順に外していく。
 おれは慶多のように下にタンクトップもなにも着ていないので、素肌が外気にさらされて鳥肌が立った。



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