ブルー・デュール
桜 常 編
27
※
おれは智親のされるがままになっていた。
なぜか抵抗する気が失せてしまうのは友崇の洗脳のせいなのだろうか。
智親はあらわになったおれの胸に手をはわせた。
触られているところがひどく熱くてむずむずする。
智親の手が胸の突起をかすめると体が震えた。
おれの反応にかすかに笑ったのが気配でわかる。
智親は指で突起をつまんではこねくり返し、もう片方の突起を口に含んで舌で転がした。
おれは両手両足を無防備に投げだしたまま、荒い息をはいた。
「んうっ、ふあ……」
体が勝手にはねるのを抑えられない。
ベッドのシーツを何度も足で蹴ってしまう。
こんなおっさんに触られて気持ちいいだなんて、おれはどうしてしまったんだ。
「ああっ、や、めっ……」
「いい声」
なめながら喋られるとそれがまた刺激になって困る。
おれは唇を強くかみしめた。
こんなことをしている場合ではない。
おれはなけなしの力をふりしぼって、智親の腹に蹴りを食らわせた。
贅肉ばかりでろくに筋肉のついていない腹を蹴られ、智親は息を詰まらせておれの上に倒れこんだ。
重い体を横に転がして眠り薬入りのハンカチを取り出し、智親の顔に押し当てた。
智親はしばらくもがいていたが、そのうちおとなしくなった。
おれはハンカチをフリルの中に戻し、ドレスを着直してベッドから飛び降りた。
顔に張りつく作り物の髪をはがし、ふらつく足を叱咤して、
廊下に面しているドアとは違う片開きのドアを開ける。
寝室の隣は書斎だった。
おれは壁に並ぶ戸棚に駆け寄って、片っ端から中身をひっくり返した。
早く早く、ピースを見つけてここから逃げなくては。
引き出しの中は混沌としていて、紙切りナイフやハンコや名刺入れや電池などが雑然と放りこまれている。
この際こそ泥だと思われても構わない。
おれは不要なものを床に捨てて目当ての品を探した。
「あった……!」
震えるようなか細い声をあげているのは、ケースに収まったマーブルのガラスペンだった。
ケースからペンを取り出し、右手をかざして意識を集中させた。
心臓の鼓動がかなり早いのがわかる。
頭の中はぐちゃぐちゃでなかなか集中できなかったが、
普段の倍ほどの時間をかけてピースは丸い形になり静かになった。
おれはそれを服の中に押しこみ、窓を開けて外に出た。
一階で助かった。
◇
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