ブルー・デュール
桜 常 編
25
しっかり勉強しようと意気ごんだまではよかったが、ピースが見つかればそっちが最優先だ。
また鳴瀬たちにとられるわけにはいかない。
おれは試験前の週末をつぶしてピース回収に向かった。
今回は金持ちのおっさんの家にあるらしい。
これは厄介だった。
金持ちの豪邸はセキュリティ対策が万全だ。
おれの付け焼刃ピッキングでなんとかなるものではない。
仮に忍びこめたとしても、警報機を解除しないとすぐ手が後ろにまわってしまう。
本職の泥棒ではないのだから、こっそり中に入るのは不可能だった。
だからといって、こんなやり方はどうかと思う。
「大丈夫、似合ってる」
「嬉しくねえ」
「こらこら、言葉づかいに気をつけろ」
友崇が提案したのは、娼婦になりすまして堂々と潜入するという手だった。
家主のおっさんは好き者で、しょっちゅう家に女性を連れこんでいるらしい。
それも安いデリヘルではなく高級娼婦ばかり。
そこを利用してもぐりこもうという魂胆だ。
おれはひらひらした体のラインを隠すドレスを着て、化粧をしてかつらをかぶり、
いつもとは百八十度違う変装をした。
なぜ友崇は化粧ができるのか謎だ。
家の見取り図を手に入れ、偽の娼婦の手配もやってくれた。
そこまでできるのならセキュリティも破れそうだが。
まさか面白がっているんじゃないだろうな。
「いいか、今夜のお前の名はメイリだ。メイリ」
行きしなに車の中で友崇から耳にたこができるほど言われた。
「メイリは少し我が強いがそれは照れ隠しだ。なかなか素直になれなくてつい強気になってしまうが、
根は純粋。恥ずかしくて自分から行けないから、来いと言われると突っぱねるが本当は嬉しいんだ。
真っ赤になりながらも拒絶の言葉は忘れない。わかったな」
「なんだよその設定」
「俺の趣味。かわいいだろこういうキャラ」
「あっそ」
「嫌よ嫌よも好きのうちってな。嫌がるそぶりがいいんだよ。
でもひとたび限界を越えると素直に甘えるようになるんだ」
「あんたがそんな変態だったなんて知らなかったよ」
「違うだろ。そっ、そんなことありませんっ、勘違いしないでください! だ。言ってみろ」
言ってたまるか。
◇
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