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ブルー・デュール
桜 常 編

21

 鳴瀬はどんどん歩いていってしまうので、おれは置いていかれないように早足にならざるをえなかった。
 鳴瀬はファッション店ばかりのデパートに用はないらしく、まっすぐ外に出た。
 駅前通りは混雑していて、子供連れが多いので小さい子を蹴飛ばさないように
注意を払わなければならなかった。
 おれは人ごみは苦手なんだ。

 しかし鳴瀬はそんな様子は微塵も見せず、一人でさっさと歩いていく。
 鳴瀬があまりに堂々と歩くので、自然と周りが道を空けていくようだ。

 しばらく歩いて、鳴瀬はようやくおれが遅れ気味であることに気がついた。
 おれが追いつくのを待って、鳴瀬は嫌みたらしく口角を上げた。

「そうだったな、お前は迷子になりやすいのを忘れてたよ。悪いな」
「なりませんよ。ってかどこ行くんですか」
「生徒会室の備品の買い出しだ」

 休日なのに仕事で来ているのか。

 しばらく雑用係をこなしてわかったが、生徒会長はいろいろ大変のようだ。
 教師と生徒との板挟みになって様々なところに気をまわしているし、
部活や委員会がきちんと運営されるように目を配っている。
 鳴瀬はちやほやされているだけのアイドル的存在ではなかった。
 特に副会長があれだから、鳴瀬の負担は大きいのだろう。

 おれたちは駅に隣接している老舗デパートに入った。
 さっきのデパートとは客層がだいぶ違う。
 鳴瀬に視線を送るのは女の子たちではなく、昔の女の子たちだ。

 鳴瀬は家電売り場で物色を始めた。
 掃除機でも買うのかと思ったが、目当ての品はどうやら空気清浄機のようだ。

「生徒会室の備品ですよね?」
「ああ」
「こんなのいるんですか?」
「これがあると作業効率があがるからな。探しているのはマイナスイオンが出るやつだ」
「へえー」

 おぼっちゃまか。
 おれには経費の無駄遣いにしか思えないのだが、空気だけでそんなに違うのだろうか。
 確かにあの部屋は少し埃っぽかったが。

 マイナスイオンつき空気清浄機はたくさん種類があって、鳴瀬はずいぶん考えこんでいた。
 そのうち店員がやってきてあれこれ説明しだした。
 おれは少し離れたところで待つことにした。

 ようやく品物を決めた鳴瀬はカウンターで支払いを済ませ、領収書を切って宅配の手続きをして戻ってきた。

「よし、次だ」
「まだあるんですか」
「今度のはお前も興味あると思うけどな」


   ◇



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あきゅろす。
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