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ブルー・デュール
桜 常 編

19

 おれと生徒会(倉掛を除く)の頑張りのおかげで、生徒総会は無事に終わった。
 やっと解放されて肩の力を抜いたおれに、慶多が街に降りようと誘ってきた。
 久しぶりにひまな休日だったし、おれは二つ返事で了承して学校を出た。
 財布と携帯電話くらいしか必要なものはなかったが、念のために薬をポケットに入れておく。
 まだ周期的に飲まなくても平気だが、友崇から口を酸っぱくして忠告されるので従っておいた。

 敷地の広い桜常高校は校内から出るだけでも時間を食うが、そこから街まではさらに遠い。
 なぜこんな辺鄙なところに校舎を建てたんだと理事会に文句を言いたくなる。
 広大な土地を確保するには仕方のないことなのだが、不便で仕方ない。
 どうせそれも計算のうちなのだろう。
 やんちゃ盛りの中高生が夜遊びをしに学校を抜けださないよう、場所を選んだに違いない。

 街までは送迎バスに揺られて三十分ほど。
 慶多はデパートで開催されている期間限定の展示会に行きたいようだった。
 おれは特に買いたいものはなかったが、慶多についてデパートに向かった。
 慶多はぶかぶかのプリントシャツの上にパーカーをはおり、カーゴパンツとラフな服装だ。
 おれはジーンズにさんざん使い倒している慣れたダークグレーのジャケットを着ていった。

 休日なのでデパートはおれたちのような買い物客でにぎわっていた。
 女子高生らしき集団もたくさんいる。
 久々に女性を見た気がした。
 全寮制男子校に暮らす者の悲しき宿命だ。
 男に走る奴の気持ちも、ほんの少しはわかるような気がしないでもない。

「あれー?」

 エスカレーターから身を乗り出して慶多が言った。

「なに? あの風船欲しいのか?」
「違う、あそこ」

 慶多は下のほうを指差した。
 エスカレーターはデパートの中央をぶち抜く巨大な吹き抜けに沿っているので、
どの階の様子もなんとなくわかる。
 吹き抜けの真ん中には風船でできたオブジェが飾られている。
 その影に半分隠れて、廊下のベンチに小さな人だかりが見えた。

「あれ、会長と青波さんじゃね?」
「……なんでこんなところに来てまで」

 あいつらと鉢合わせしなきゃならないんだ。

「りゅう、ちょっと会ってこーぜ」
「せっかく上がってきたのにわざわざ戻るのかよ」
「照れんなって、会長の私服姿なんて滅多に拝めねーぞー」

 なぜおれが照れていると思うんだこいつは。

 慶多は無理やりおれを下りエスカレーターに乗せた。
 普段の三割増しとげとげしている髪も相まって、慶多はひどく浮かれているように見える。
 おれの気分は下降一直線だった。

 ベンチに座った鳴瀬と倉掛の周りに、買い物途中の女の子が群れを作っていた。
 倉掛はダメージデニムパンツをはき、タンクトップの上にボタン全開のシャツを重ね着して、
普段の三割増しアクセサリーをつけている。
 鳴瀬は黒くすらっとしたズボンに銀のベルトを締め、レザージャケットをはおっている。
 倉掛は甘い笑顔の大安売りで女の子たちと喋っているが、鳴瀬は長い足を組んで仏頂面だ。
 なんという対照的なコンビ。
 鳴瀬がにこやかにしているというのも違和感あるが、もう少し愛想よくできないのか。
 しかしそれでも女の子たちは怯まずに話しかけている。



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あきゅろす。
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