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ブルー・デュール
桜 常 編

119

「まあ当然の結果だったとは思いますが、なにか一言お願いします」
「ああ……高校最後の文化祭を最良の形で締めくくれて、嬉しく思う。ありがとう」

 鳴瀬はわずかに口角をあげて笑った。また誰かが倒れた。

「素晴らしいお言葉をありがとうございます! さすが貫禄が違います! いやーかっこいいです。
ほんとにもーどうしましょう」

 少々司会がおかしくなってきた。

「ええと、それでは次は……なんだっけ……そうそう、フィナーレ! フィナーレです!」

 突然スポットライトが消え、グラウンドが闇に包まれた。

 右手から打ち上げ花火のあがる音が響き、夜空に大輪の花が咲いた。
 金色の光がきらめきながら空に吸いこまれるようにして消え、すぐに新しい花火がグラウンドを照らした。

 不意に隣に気配を感じて見ると、鳴瀬がやってきていた。
 花火が咲いた一瞬だけ目が合ったが、おれはすぐに前を向いた。

「なんだよ。こっち向けよ」
「うるさい。おれは花火が見たいんだ。離れろ」
「なに怒ってんだよ?」
「怒ってねえよ」

 鳴瀬が伸ばしてきた腕を払い、おれは花火を睨みつけた。

「おい……今度はなにが気に入らねえんだよ」

 払ったのに簡単に腕を捕えられて引き寄せられた。

「離せ!」
「暗いし誰も見てねえよ。なんだよ。言えって」

 このまま黙っているとどんどんエスカレートしそうなので、おれは重い口を開いた。

「……一位になれてよかったな」
「そりゃどうも」

 間髪入れずに返されて、またしても無性に腹が立ってきた。
 せっかく忘れていたのに。

「二時間待ちとかどこの夢の国のアトラクションだよ。モテモテでよかったですね。
さすが生徒会長様は違いますねェ」
「はあ? お前……」
「倉掛みたいにへらへらしやがって。そんなに一位になりたかったのかよ。
心配しなくてもお前の人気っぷりなら確実に一位だよ。おれもモテモテになってみたいなー。
相手もよりどりみどりなんだろーなー。あーうらやましい」

 鳴瀬はなにも言い返さない。
 妙だ。
 いつもなら人を食った態度ですぐ言い返してくるくせに。
 図星ということか。

「かわいい子いっぱいはべらせちゃってさ。気になる子いた? おれにも少しはわけろよな。
お触り禁止だったからってかわりにおれに触んじゃねえよこの馬鹿。タコ。色魔」

 いつまでも腕を離してくれないので、腹に蹴りでも入れてやろうか。
 そう思ったとき、ひときわ大きな花火があがり、鳴瀬の顔を照らした。
 鳴瀬は穴があくほどおれを見つめていた。

「戸上……」
「んだよ」
「お前、嫉妬してんのか」
「はあっ? してねえよ! うぬぼれんな馬鹿!」

 暗闇で助かった。
 でなかったら顔が真っ赤になっていることに気づかれていた。



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