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ブルー・デュール
桜 常 編

115

 次の日は外からの客で大混雑だった。
 市内の女子高生が根こそぎやってきたのではないかと思うほどだ。
 コスプレ喫茶も大盛況で、廊下まで長蛇の列だった。

「りゅう、これ一番!」
「はいはい」
「りゅう、これ四番でこれは六番な! 落とすなよ!」
「わかってるよ」
「すみませーん。一緒に写真撮らせてもらっていいですか?」
「いいですよー。今行きまーす」

 もはや猫耳ルックが恥ずかしいなんて言っている場合ではなかった。
 猫の手も借りたいとはこのことだ。
 おれは今後、飲食店でのアルバイトは絶対にしないと固く誓った。

 ドリンクとケーキを運ぶだけでもせいいっぱいなのに、やたらと写真を要求されるのが困ったものだった。
 珍しい格好をしているせいだろうが、女の子たちにあちこち触られて変な気分になってくる。
 確実にセクハラだと感じたのは一度や二度ではない。

 幽霊メイドコスプレの久河は女子高生よりも大人の女性に人気で、おれより激しいセクハラに遭っていた。
 あの気が強そうなところが、エスっ気のある女性の心をくすぐるのだろう。

 写真、写真、注文、写真、注文、セクハラ、となんとか激務をこなし、おれのシフトはあっという間に終わった。

 今度こそ、慶多や峻と一緒に校内をまわることになった。
 ただし、コスプレを解除することは許されない。
 接客時の格好のまま、看板を持って宣伝がてら回らなければならない。

 廊下に出れば黄色い歓声とともに女子高生に囲まれ、またしても写真をせがまれ、なかなか前に進めなかった。
 慶多が倉掛譲りの笑顔の大盤振る舞いをするものだから、
次々と押し寄せる写真撮影の波におれと峻はすっかりくたびれてしまった。

「はっは、大成功だよなあこれ」

 慶多はドラキュラのマントをつまみ、ほくほくして言った。
 慶多のアドレス帳には、今日だけで数十人の女子高生が新たに登録されただろう。

「こりゃあ、売り上げ相当期待できるぞ。総合入賞も夢じゃないな」
「一年で入ったら快挙だぞ!」

 音速の音村改め魔女っ子峻くんも嬉しそうだ。

「俺は女装カフェがいいと思ってたんだけどな。これもありだったな」
「だろ? 真岸が見たらびっくりするだろうなー。突然辞めるとかまじねーよな」
「本当だよ。なありゅう」

 おれは笑いながら頷いた。

「あ、ここだ」

 慶多が突然立ち止まった。
 教室の札を見ると、何年何組というシンプルなものではなく、
黒地に洒落た黄色いレタリング文字で「CLUB BLUE DUR」と書かれていた。
 暗幕が引かれて中が見えない。

「なにここ」
「三年一組だよー。ホストクラブもどき。お触りは禁止」
「ホスト? 高校生の分際でホストやってんのか!?」
「なに驚いてんだよ、うちでも候補で出ただろ」

 慶多はけろりと言い放ち、外の壁に設置された掲示板に目を通した。

「はっはあ、やっぱりこうなるよなあ」
「なに?」



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あきゅろす。
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