82 腹につくほど折り曲げた足を支える腕の力すら、もうなくなりかけている。 珂月は必死に懇願した。 だが五十井はふんと鼻を鳴らした。 「だめだ。もっとちゃんとおねだりしてみろ」 「ひゃっ!」 指を三本に増やされ、粘膜に叩きつけられる。 視界が白くなるほどの悦楽に、珂月は喉をのけぞらせた。 「あんっ、中っ、ついて……」 「なにで?」 五十井はすっと体を倒し、珂月の耳元で囁いた。 ここで下手に恥じらったりするともっとひどい目に遭うと、珂月はここ数日の経験でわかっていた。 「な、か……いかいさんので……かっ、かきまわして、ください……」 息も絶え絶えに言うと、中を蹂躙していた指がすべて引き抜かれた。 「まあいいか」 急な喪失感にひくつく秘部に熱いものがあてがわれ、珂月は期待で背筋がぞくりと震えた。 そのまま最奥まで突き入れられ、珂月は嬌声をあげた。 「あああぁっ! ああっあっ、んんっ」 「はっ、イイ顔する……っ」 殺風景な部屋に肉のぶつかる音と卑猥な水音が響く。 乱暴にこすられ、珂月はなにがなんだかわからなくなった。 連日の淫行でこすれてできた背骨の擦り傷が開いて痛み始めた。 五十井は縛られた自身に手を伸ばそうとする珂月の両手をつかんでシーツに縫いとめ、欲望のままに腰を振り立てた。 珂月がどんなに辛そうな顔をしようとも関係ない。 「はっ……お前、本当に情けねえ奴だよなあ」 唐突な五十井の言葉に、珂月は閉じていた目をゆっくり開いた。 「お前の親父は、臆することなくダラザレオスと戦った……お前を守るためにな。勇敢だったって聞いてるぜ。なのにお前ときたら」 五十井の薄い唇が残忍な言葉をつむぐ。 「死にたくないばっかりに敵のダラザレオスとねんごろになっちまった。親父が体張って守ったってのにこのざまだ。 親父が知ったらさぞかし失望するだろうなあ……」 五十井は喉の奥で低く笑った。 珂月の両目から大粒の涙がこぼれおちた。 熱い涙が次から次へとあふれてシーツにしみを作っていく。 「この臆病者。プライドはないのかよ」 五十井はひどく楽しそうに珂月の泣き顔を見つめ、執拗になじった。 五十井は珂月を抱くとき、必ず傷つけて泣かせないと気が済まないようだった。 「うっ……ひっ、あぁ……っ」 珂月は強く揺さぶられてあえぎながら泣いた。 人を人とも思わない五十井の手に落ち、いつ殺されるかもわからない過酷な状況で、珂月の心は壊れていく一方だった。 五十井は珂月の腰をつかんで張りつめたものをぎりぎりまで抜き、最奥に打ちつけた。 それをくり返すと珂月は甲高い声で啼いた。 「ひあああっ! いやっ、ああっ!」 絶頂に向かって動きながら、五十井はおもむろに珂月の自身に結ばれていたひもをほどいた。 押さえがなくなり、珂月は目の前がスパークするのを感じて悲鳴をあげた。 珂月は細長い白い欲を吐き出し、反動でしめつけられた五十井も珂月の中で達した。 達してずるりとモノを引き抜けば、秘部から白い液体があふれてきた。 珂月は欲を吐き出すとともに昏倒してしまっていた。 五十井は深く息をつくと、少し乱れた服を整えてベッドを下りた。 傷だらけの体を横たえた珂月に布団をかけてやる、なんてことはしない。 用が済めば一瞥もせず、明かりを消して部屋をあとにした。 ◆ 木造のぼろアパートの302号室。 ドッグズ・ノーズの本拠地であり浩誠の自宅であるその部屋には、いつもの通りメンバーが数人集まってたむろしていた。 いつ来るかわからないバイラの襲撃に備えて、パトロールに出ていない数人は待機するのが常だ。 小さなハンター組織だがアットホームさではどこにも負けない彼らには、いつも笑顔が絶えない。 メンバーがある程度集まればすぐ宴会になるし、普段でもゲームなどをして和気あいあいと過ごしている。 しかし今、部屋にいるメンバーたちのあいだに会話はない。 ただリビングの床に輪になって座り、ばば抜きをして暇を紛らわせているだけだ。 機械的に行われるトランプゲームはただの作業だった。 いつも馬鹿騒ぎをしてメンバーを笑わせている飛鶴でさえ、無表情で手持ちのカードをぼんやり見つめている。 元気さを象徴するようなピンピン尖った茶髪も、今日はどことなくへたっているようだ。 部屋の主である浩誠は、数十分前に寝ると一言残して寝室に入ってしまっていた。 珂月が五十井に連れていかれてからというもの、ドッグズ・ノーズは変わってしまった。 今まで仲良くしていた珂月がダラザレオスの所有物だったことや、 リーダーがダラザレオスと一戦交えたことが衝撃的でもあったが、なにより珂月の安否が気がかりだった。 五十井脩吾は噂通りの黒い人物のようだし、彼に反抗した珂月が無事でいられる保証はない。 ←*|#→ [戻る] |