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サビイロ契約

66

 仕事は終わりだったが、その日は当直だったのでシンク・ベルを離れるわけにはいかなかった。
 珂月は適当に時間をつぶし、夜になるとふらふらと暗い食堂に行って夕食をとった。
 今夜のメニューはしょうが焼きにキャベツとトマトの炒め物だった。
 珂月はいつか留宇が座っていたすみの席に座って食べた。
 だがすっかり食欲が失せていたので、半分ほどしか口にできなかった。

 珂月は着替えの入った鞄を持ち、当直室に向かった。
 今夜と明日、ハンターたちのいびきがうるさいあの場所で寝なければならないと思うと、自然と足が重くなっていく。

 エレベーターを降り、節電のためほぼ真っ暗な廊下を歩いていると、突然脇から腕が生えてきて珂月の胸ぐらをひっつかんだ。
 叫ぶ間もなく、珂月は近くの部屋に放りこまれた。

「いてっ……な、なにすんだよ!」

 床にうつぶせに押さえつけられ、もがきながら怒鳴ると脳天にげんこつが降ってきた。

「静かにしろって」

 その声には覚えがあった。
 首をねじって見上げると、珂月がシンク・ベルに入りたてのときに絡んできた三人組のハンターが立っていた。
 以前、ニヤニヤしながら無遠慮にべたべたと触られ、かなり不快な思いをしたのを覚えている。

 三人がかりで押さえこまれ、品定めするように全身を見られて珂月は冷や汗をかいた。
 認めたくはないが、かなりまずい状況だ。

「ひっ」

 ズボンの上から形を確かめるように臀部をなでられ、珂月は体を固くした。
 珂月の背中に馬乗りになっている男は、珂月の反応にククと笑った。

「大人しくしてりゃ、悪いようにはしねーよ……」

 男は珂月の耳元で囁き、細いうなじに鼻をつけると深く息を吸いこんで匂いを嗅いだ。
 首筋に男の息が吹きかけられ、珂月は嫌悪感に眉根を寄せた。

「こんなことがバレたら……っ」
「バレねーよ。お前が言わなきゃな」
「男たちによってたかって犯されたんですーって、言えるもんなら言ってみろよ」

 三人は悔しさに震えている珂月を見下ろしてせせら笑った。

「そしたら今度は噂を聞きつけた知らないおじさんがお前を抱きに来るかもな」
「ハハ……」

 三人は笑いながら珂月を持ち上げて仰向けにした。
 珂月は自由になった両腕を振り上げようとしたが、すかさず頭上に陣取った男に手首をつかまれてしまった。
 男は珂月の手首を痛いほど握りしめ、自分の股間へと導いた。

「ほら、今からこれをくれてやるよ」

 ズボンごしに男の熱いものを手の平にこすりつけられた。

「いやだっ……」
「黙らねえと口塞ぐぞ?」

 一番大柄な熊のような男は、珂月の両足を大きく開いてそのあいだに体を入れ、閉じられないようにした。
 珂月の内股をジーンズの上からなで、ゆっくりと手を上へと移動させていく。
 中心にたどりつくと、大きな手でぐっと珂月の弱いところを覆い、強く揺すり始めた。

「ああ! やっ、やめっ……やだっ!」
「嘘つけ、気持ちいいんだろ! こんな世の中でお前も溜まってんだろうが? 俺たちがたっぷり抜いてやるよ」

 珂月は固く目を閉じて涙をこらえ、布の上から与えられるもどかしい刺激から逃れようと身をよじった。
 だがその姿は男たちをいたずらに煽ることにしかならなかった。

 もう一人の男は興奮に息を荒くして、珂月の上にかがみこんでシャツのボタンをいくつか外し、はだけた首筋から鎖骨にかけて舌を這わせた。
 唾液を垂らされてぐちょぐちょにされ、珂月は泣きたくなった。
 こんなくだらない男たちに体を弄ばれても、抵抗できる力がない。
 己の弱さを痛感した。

「あー……肌白いなあお前……」

 珂月の首筋に吸いついていた男は、恍惚とした表情で珂月の頬を舐めた。
 それでも足りなくなり、珂月のシャツを力づくで全開にした。
 ボタンが弾け、床を転がっていく。

 男は次に下に着ていたグレーのタンクトップに手をかけ、筋肉に物を言わせて無理やり引きちぎった。
 珂月の肌があらわになり、男は喉を鳴らした。

「あ……?」

 男は胸の小さな飾りにしゃぶりつこうとして、動きを止めた。
 左胸を凝視している。

 ほかの二人も珂月の左胸にあるものを見つけて目を丸くした。
 激しく上下する珂月の左胸には、左を向いて咆哮する狼型バイラのタトゥーがある。

「冗談だろ……」

 一人が珂月の左胸に恐る恐る手を伸ばし、バイラを囲むように描かれた茨にそっと触れた。


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