サビイロ契約
30
以前珂月は、ルザが日用品店の店主を襲おうとしていたところに割りこんで止めた。
そのとき、自分の血を好きなだけ与えるかわりに、ほかの人には手出しをしないとルザに約束させた。
だが、珂月がルザの行動をすべて把握できるわけもないので、その約束が守られているかどうかは定かでない。
珂月の意識が内側に向かっているのを察したルザは、たちまち不機嫌な顔になった。
「なにほかのこと考えてんだよ」
「えっ? いや、別に」
ルザは珂月を軽々と抱き上げ、ベッドに放り投げた。
安物のマットレスが大きく軋んだ。
「乱暴だなあ……」
珂月がぶつぶつ文句を言っていると、ルザが上に乗ってきて手際よく珂月のパーカーとズボンを脱がせていった。
珂月はルザがなにか右手に持っているのに気がつき、目を凝らした。
「それ……」
珂月は目を疑った。
それはどう見てもいかがわしいおもちゃだった。
本でしか見たことがなかったが、男のものを模した形のバイブに違いない。
「なんでそんなもの持ってんだよ!」
「これ? 知り合いにもらった」
ルザは見せつけるようにバイブを珂月の目の前に持ってきた。
男向けなのか先端が細い。
間近で見て珂月は背筋が寒くなったが、同時にどこか力が抜けた。
「……アスタルトにもらったんだろ」
「よくわかったな。あいつ人間の道具を集めんの趣味だから。俺はんなもん興味ねーけど、お前が喜ぶところが見たかったから持ってきてやったんだよ」
「いや、喜ばないから」
「へー? 初めて見るって顔してるのにわかるのかよ」
ルザはバタフライナイフを初見で使いこなす手でバイブをくるりとまわした。
珂月はルザの手から目を離さない。
なにも言わないが目が怯えているので、珂月がなにを言いたいかルザにはすぐにわかった。
「怖い?」
ルザは小声で問いかけた。
その声があまりに優しかったので、珂月はゆっくり頷いた。
とたんにルザはにやりとほくそ笑み、珂月は素直に頷いたことを後悔した。
「怖いんだ? ふーん。じゃあ使ってやるよ」
珂月はルザがこういう奴だということをすっかり失念していた。
ルザは珂月の脇に手を差しこんで持ち上げ、後ろから抱きこむ形に座らせた。
珂月は腹にまわされた長い腕に触れ、振り向いてルザの顔をうかがった。
ルザは不安そうに見上げてくる珂月に笑いかけた。
ルザは単純にその仕草がかわいらしかったから笑っただけなのだが、珂月はなにか企んでいるのではと想像してさらに怯えた。
ルザに薄い胸をなでられると、珂月はくすぐったくて身をよじった。
「お前ここ弱いよな」
「そんなんじゃないっ……」
「そう?」
珂月はかたくなに否定したが、両の突起を指でいじられると甘い痺れを感じた。
小さい突起が固く熟れるまで、ルザはそこを弄んだ。
赤くなった突起は珂月の白い胸に映えていやらしかった。
「やっぱ弱いじゃねーか。わかりやすいよなお前」
「うるさ……あっ」
少し反応しかけていた自身を下着ごしになでられ、珂月は思わず声を上げてしまった。
ルザはくすくす笑い、左手で胸の飾りをこねながら右手で珂月の中心に触れた。
「ん、ん……あ」
輪郭を確かめるように指でなぞられ、包みこまれるようにもまれると、敏感な中心はどんどん熱を帯びていく。
布ごしの緩やかな刺激がもどかしく、珂月は両足をこすり合わせた。
「なに? もっと触ってほしい?」
ルザが悪戯っぽくたずねてきたが、珂月は答えなかった。
もう中心は熱く質量を持ち、下着の中で窮屈そうにしている。
珂月はルザの腕に爪を立ててささやかな抵抗をした。
「はは、なんだよそれ。かわい」
ルザは珂月の下着を取ってベッドの脇に放った。
押さえつけられていた珂月の自身はすっかり立ち上がり、先走りでてらてらと光っている。
ルザは珂月の内股をゆるりとなでたが、自身には触れなかった。
「ここに触ってほしい?」
「……別に」
「嘘つくなよ。上の口は正直じゃなくてだめだな。これでも咥えてろ」
ルザは珂月の口にバイブを突っこんだ。
「んんー!」
「ほら、舐めろよ」
珂月は眉根を寄せながらも言われた通り丹念に舐めた。
根元まで咥えると、おもちゃではなく本物を咥えているように見えて、ルザはわずかに口角を上げた。
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