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サビイロ契約

11

「あっ!」

 急に首をしめられ、珂月はルザの手に爪を立てた。

「やめ……なにす……」

 かなり手加減されているが、それでも苦しいものは苦しい。
 口を大きく開けてなんとか酸素を取りこもうともがく珂月を、ルザはうっとりと見下ろしている。
 珂月は足をばたつかせてルザの胸を思いきり叩いた。

「気持ちよくない?」

 意味のわからない質問をされ、珂月は首を振った。
 ルザは少しがっかりしたようだった。

「あっそ。なんだよあいつ、人間は苦しいのも快感になるって言ってたくせに……」

 ルザは珂月の首を離し、身をかがめて少し指の跡がついた首筋を舐めた。
 舌先で押すように舐めまわし、皮膚の下の血管を探っているようだ。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「んだよ」
「こないだも十分飲んだじゃないか! また吸う気?」

 先日ふらりとやってきたルザは、珂月が気を失うまでさんざん血を飲んでいった。
 このまま死ぬんだと本気で思ったほどだ。

 ただでさえ今日はバイラ退治で疲れているのだから、また好きなだけ飲まれたら貧血で病院行きになりそうだ。

「当たり前だろ。こんなうまそうな匂いさせられて耐えられるかよ」

 ルザの目が獣のようにギラリと光った。
 ルザは本能のままに生きている。
 珂月の訴えを聞き入れる情なぞ持ち合わせていない。

 珂月はなんとかルザの気をそらそうと、ない頭をひねった。

「な、なあ、そんなしょっちゅう吸われたらありがたみがなくなるだろ」
「お前は毎回ありがたがって飯食ってんのか」
「おれは日本人だ、いつもいただきますって言ってから食べてるよ! お米を作ってくれる農家の人に感謝を……じゃなくて」

 珂月はルザの顔に恐る恐る手を伸ばした。
 ルザの頬はさらりとなめらかで少し冷たかったが、手の平に体温を感じた。

 上目遣いでねだるように唇をわずかに開くと、頬に伸ばしていた手首をつかまれて枕の脇に押しつけられ、噛みつくようなキスをされた。
 熱い舌に口腔をかきまわされ、唾液がぴちゃりと音を立てた。

「ん……んう……っ」

 吐息がぶつかり、ルザの興奮がじかに伝わってくる。
 不意に珂月の唇にルザの牙が触れ、ぴりっとした痛みと共に口の中に血の味が広がった。
 それでも構わずルザは深く口づけてくる。

「ん……ふ、んんっ」

 ルザが珂月の下唇に吸いついてきた。
 傷口を舌でなぶられ、珂月は刺すような痛みに耐えた。

「しょうがねえな……今日はこれで我慢しといてやるよ」

 傷をぺろりと舐めてルザは高慢ちきに言った。
 そのあとすぐに珂月の服を脱がせにかかる。
 珂月は心の中でやれやれとため息をついた。

 男を誘惑するなんて初めての経験なので、うまくいくかわからなかったが、なんとかできたようだ。
 今血を飲まれるくらいなら、体を差し出したほうがいくぶんましだ。
 どうせルザは血を飲んだあと必ず珂月を抱くのだから、最低限の譲歩をしたことになるだろう。

 ルザは珂月を裸に剥いてしまうと、両膝裏に手を入れて持ち上げ左右に開いた。
 後ろまで丸見えという屈辱極まりない格好をさせられ、珂月は口をぱくぱくさせた。

「なっ、なっ……」

 羞恥で真っ赤になりながら睨んでくる珂月を見下ろし、ルザはにっこりと綺麗な笑みを浮かべた。

「おい、俺は見てるから、お前自分でしごいてイって見せろよ」
「はあ!?」
「ちゃんとできたら続きしてやる」
「ふっふざけんな、やだよそんなの!」
「やだじゃなくて、やるんだよ」

 ルザは顎でやれと促した。
 珂月はしばらく声も出なかったが、逆らえばなにをされるかわからないので、しぶしぶ自身に手を伸ばした。

「ん……」

 珂月は無理に手を動かしていたが、ちらりと見上げたルザは欲情しきった目をしていて、それを見ると妙に興奮した。
 とたんに下半身に血が巡りだすのを感じた。

「あ、はあっ……んっ」

 いったんその気になってしまうと、もう止まらなかった。
 珂月はルザが見ているのも構わず、どんどん自身を追いあげていった。
 先走りが溢れ、静かな部屋に卑猥な水音が響いた。

 珂月は電気も消さずに眠っていたので、部屋は明るい。
 明るい中で頬を染めて自慰に耽る珂月はひどく扇情的だった。
 ルザはびくつく足を固定したまま、珂月の痴態をじっと見ていた。

「あっ……あぅ……はっ」

 体中を甘い感覚に支配され、珂月は動かす手を早めていった。
 恥ずかしさなんてどこかに吹っ飛び、達することしか考えられなくなる。
 身をよじりたくても足が固定されて動かないので、かわりに腰を揺らめかせた。



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