少年は泡沫の夢を見る
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ヴァラディン城の会議室で、ダンタリオは秀麗な美貌を曇らせていた。
公務はすべて中断され、ヴェルニアス国を支える貴族の面々が集められている。
「大エススの進捗状況は、すでに最終段階に入っていると見て間違いない」
ダンタリオが重い口を開いた。
「思っていたより遅かった。いつ来るかと身構えていたのに」
「人間も慎重にならざるを得なかったのでしょう。頃合いを見計らったかのように最高機密の設計図が盗まれたのですからね」
「はは、俺のおかげっすか」
場の空気にそぐわない軽口に、藍色の瞳をした魔族は表情をこわばらせた。
「放言は慎むよう!」
「はあ、すんません」
「それでは大エススは近々しかけてくるのですね」
ひとりが身を乗り出して言った。
ダンタリオは苦虫をかみつぶしたような顔になった。
「武器の存在が露見した以上、間違いない。至急かの国に送った者たちを帰還させよ」
「はい、陛下」
「ヘルヴィス、ゴルギアス家に使いを出せ。親書をしたためておくからあとで来い」
「わかりました」
藍色の瞳の魔族が真摯にうなずいた。
「ではここでいったん解散だ。シュトが目覚めて、大エススでなにがあったのか聞いてからまた話し合おう」
一同は退出するダンタリオを立ち上がって見送った。
だがヘルヴィスはシュトの名を聞いて心配そうに視線を落としていた。
安心したのか城に帰るなり気を失ったシュトは、侍医の治療を受けて静かに眠っている。
魔力をかなり奪われたので、シュトは回復するまで安静にしていなければならなかった。
しかしその頃、シュトはすでに目を覚ましていた。
しかもたまたま付き人が外していたので、部屋を抜け出して廊下をうろついていた。
明確な目的は持っていなかったが、とにかくじっとしていられなかったのだ。
刺された右肩が痛んだが、あとは体が少しだるいくらいで動き回るのに問題はなかった。
ひとまずダンタリオに話を聞こうと、シュトは小走りに執務室に向かった。
だが考え事をしながら前も見ず角を曲がったので、魔族と出会いがしらにぶつかりそうになり慌てて止まった。
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