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少年は泡沫の夢を見る

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 シュトはなぜそんなことを言われるのか、さっぱりわからなかった。
 ケセド王の口調は心なしか厳しくなりつつある。

「いいえ、なにも渡されておりませんし聞いておりませんが」
「そんなはずはないだろう」

 ケセド王は冷たく笑った。

「うわっ」
「ハズ!?」

 シュトが振り向くと、ふたりの衛兵がハズの首元で槍を交差させ動きを封じていた。
 シュトは冷や汗を禁じえなかった。

「なっ、なにをするんですか!」
「わしに逆らうことは許さん。正直に答えよ」

 ケセド王が手を上げると、近衛兵たちがシュトを囲んだ。
 両手を背中で固定され、後頭部をつかまれる。
 シュトは涼しい顔をしている王と宰相に怒鳴りつけた。

「どういうことですかこれは! おれが一体なにをしたって言うんだ!」
「言わねば命はないぞ。お前はエリエイザーの仲間だろう」
「違うって! おれはエリエイザーとはあのときが初対面だった! 疑われる理由がわからない、説明してくれよ!」
「しらを切るつもりだな。よい、こちらにも考えがある」

 近くで剣を鞘から抜く音がして、シュトは血の気が引いた。
 ひとりの近衛兵がシュトの目の前に立ちふさがった。
 その手にはひと振りの剣が握られている。

 つばは流水のような優雅な曲線を描き、刀身が白く光り輝く奇妙な剣だった。
 祭具のような繊細な造りで、実戦向きには見えない。
 それに明かりを反射しているのではなく、刀身そのものが光っている。
 シュトは輝きに言い知れぬ恐怖を感じた。

「さあ、最後だ。エリエイザーの仲間だと認めろ」

 ケセド王の言葉が残酷に響く。
 シュトは唇をわななかせたが、無実の罪を着る勇気は出なかった。
 どちらにせよ結果は同じだろう。

 シュトは小さく首を振った。

「そうか。では体に聞くとしよう」



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あきゅろす。
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