24 「なに、なんであいつついて来るの?」 「エリエイザー捕縛の命は俺とグレックに与えられたものだ。今まで別々に探していたが、俺があの村で見つけたことを知って追ってきたんだろう。あいかわらず足の早い奴だ」 「どうやって知ったんだよ」 「たまに鳥が手紙運んでくるだろ。俺たちはああして城と連絡を取り合っている」 「ああ」 「心配するな、お前のことは報告していない」 それがいいことなのか悪いことなのか、シュトにはわからなかった。 グレックはシュトが魔族だと知っても、へえと一言で片づけてしまった。 「どうりで今まで見たことないタイプのかわいさだと思った」 「いやかわいいとか言われても嬉しくないから」 だがシュトは心の中で嬉しさをつのらせていた。 かわいいと言われたからではなく、グレックが態度を変えなかったからだ。 またあのときのような目に遭うのはごめんだった。 グレックはエリエイザーがシュトにしたことにさんざん悪態をついたあと、ようやく本題に入った。 「お前、それっきりエリエイザー見てないんだろ?」 「ああ、寄る町すべて調べたが収穫はゼロだ」 「俺もだ。でも、あいつのいそうなところの目星がついたぞ」 ライールの目の色が変わった。 「どこだ」 「パシンロウカリンガツトラ」 「え、パ、パンツ?」 聞きとれなかったシュトが目をぱちくりさせて言うと、グレックは派手に吹き出した。 「あっはっ、本当かわいーな! パシンロウ、カリンガ、ツトラだよ。国の名前だ」 「長い」 「どうしてそこに行ったと思うんだ?」 ライールが真剣に聞いた。 並んで馬を歩かせているグレックは、荷物からくしゃくしゃになった地図を取り出した。 「俺もお前もしらみつぶしに探してる。まあ大エスス周辺の小国はいくつもあるから全部というわけにはいかないが、だいぶしぼれてきたはずだ」 「ああ。だがよりによってあんな国――」 「確かにパシンロウカリンガツトラは遅れているし排他的で観光はしたくない。秘密も多い。そして最近、なにやら怪しい噂が流れ始めている」 ←**#→ [戻る] |