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色々小説
ゼロ講座を始めます!


「ナナリー総督、それは私が」

「それが欲しいんですか?
取りますよ」

「あ、そんなことなら私がやりますよ」


「…………駄目だわ」

「へ?」

久しぶりに会いに来てくれたカレンの呟きに、机で執務をしていたゼロが顔を上げた。

そんなゼロをカレンはジロッと鋭い目線で見つめた。

思わずゼロはビクッと肩を震わせた。

凄い気迫だ。
…………怖い。

ゼロはそう思った。

「立って」

「え?」

ゼロは怯えながらカレンの言葉を聞き返した。

「立てって言ってんの!!」

「はいぃぃ!」

怒鳴られたゼロは直ぐさま椅子から立ち上がったのにカレンはそれも不満げに見ていた。

なんなのぉ!

ゼロは仮面の中で翡翠色の瞳をちょっぴり潤ませた。

カレンはゼロを机の横に立たせ、自分からゼロ全体が見えるようにしてから話しを始めた。

腰に両手を乗せて仁王立ちのカレンに、ゼロは昔親友に説教された時のことを思い出した。

そう言えばルルーシュもこんな感じで僕を叱ったなぁ。

もっと自分を大事にしろとかなんとか…自分のこと棚に上げて。

「ゼロ!
今のアンタには威厳が足りないっ!!」

そうそう、よくこんな感じで僕をビシィッと指さしながら……。

「威厳…」

カレンの言葉にスザクはぼっと突っ立って固まってしまった。

「その通りっ!
ゼロって言うのはね、可憐でスター性があって優雅でエレガントでまさに上に立つ人って感じなの!!
分かる?!」

頬を赤くして、熱弁するカレンにゼロは呆気にとられた。
そして、わーいいなルルーシュはこんなに愛されて〜なんて思っていた。

「それなのにアンタは何?!
ナメてるの?!
誰これ構わずへこへこしちゃって!
なんでもかんでも自分でやるし!
そんな馬鹿みたいにただぼっと突っ立って!
全く威厳がない!
なってない!」

酷い言われ様だな。

カレンが立てと言ったから立ったのに。

ゼロは仮面の下で苦笑い。

「今日からゼロ講座を始めます!」

「はぁっ?!」

「はぁっ?じゃ無いわよドアホッ!
こんなんじゃ他国の奴らになめられるわ!
ゼロは素晴らしい人なの!
そのゼロを語るあんたにはしっかりとした立ち振る舞いをしてもらわないと困るのよ!」

「でも…私は仕事が忙しいので」

今だって執務の合間を縫ってカレンと話しているのだし、明日にはシュナイゼルやナナリーと共に外交に出なければならない。

「いいんじゃないですかスザクさん」

折角断っていたところでゼロの執務室に第三者の声が静かに響いた。

「「ナナリーっ」」

「はい?」

二人に同時に名前を呼ばれて、ナナリーは可愛く小首を傾げて笑った。

「い、いつの間に?」

二人とも全く気配を感じ無かった。
相手は車椅子だと言うのにだ。

「え?うふふ。
カレンさんがスザクさんにびしぃっと指を指した辺りからですよ」

ずっといたんじゃん。

余りの驚きで年上二人が黙りこんだのを見ながら、ナナリーはいたずらっ子の様に楽しそうに瞳を輝かせた。


「それで、話しを元に戻しますが…
カレンさんの提案、いいと思いますよ」

「ええっ!!」

「何その嫌そうな声は?」

ナナリーの発言に悲鳴を上げるスザクをカレンがジロッと睨んだ。

「ナナリーも、僕が今のままじゃ駄目だって言うのかい?」

ちょっぴり涙声のスザクに苦笑いしてナナリーは話し出す。

「駄目…と言う訳ではありませんよ。
今のゼロさんは端々まで見つめて、気遣ってくれる優しい人でそれは素敵だと思います」

「じゃ、じゃあ」

「でも」

期待に揺れたスザクの声をナナリーが制す。

「上に立つ者として、矜持や威厳を持つのも大切だと思います」

そう語るナナリーは確かに気品があるし、やはり皇族だからか威厳も感じ無くもない。

横で勝ち誇るカレンに、あ、もう何いっても駄目だなとスザクは確信する。

「じゃっ、早速今日から始めるわよ!」

カレンの瞳がキラギラと輝く。

「シュナイゼル兄様にも協力してもらいましょう!」

ナナリーも楽しそうに瞳をキラキラ輝かせる。

スザクはついに仮面の下で一筋の涙を流した。

これから大変そうだ。

カレンはゼロを少し…かなり美化しているから凄く厳しいだろうし、ナナリーは今現在もそうだが確実に楽しんでいる。

しかもシュナイゼル殿下まで加われば…

想像するだけで恐ろしい。

完璧に玩具にされそうだ。

ゼロはガックリと肩を落とした。






〜おまけ〜

「私、ナナリーは止めるかと思ってたわ」

ゼロの執務室を一緒に出たカレンは、ナナリーの車椅子を押しながらそう呟いた。

ちなみに始めはスザクが車椅子を押して送って行くと言っていたのだが、カレンが『これこそがゼロ! ゼロになるための100の立ち振る舞い(制作者 カレン)』を読むように言いつけて置いて来た。

ナナリーは、少し眉尻を下げて微笑んだ。

「スザクさんは優しいので、いつも自分一人でため込んでしまいます」

「私たちが居るって言うのにねー
本当男って馬鹿」

カレンがあーあと溜め息をつく。
ナナリーは頷く。

ルルーシュを思い出す。
自分の為に必死に戦ってくれて、最後は死んでしまった大好きな兄。

「もう、絶対に一人で頑張らせたりなんかしません。
ただ、守ってなんか貰えません。
だから、カレンさんの話しに乗ったんですよ」

「私たちと一緒に生きる為にね?」

「はい」

ナナリーとカレンは微笑みあった。

何も完璧にゼロになれなんてナナリーもカレンも(多分)思っていない。

ただ、最近また一人で頑張ってしまっているスザクが自分たちに頼って、楽しんで一緒に生活出来る様にしたいのだ。

スザクは皆だって頑張ってるだろ?

と言うかも知れないが、皆休みもほどほどに取って好きに生きている。

頑張って、そして皆で笑って、それでいいのだ。

「さあ、明日もゼロの講師頑張るわよナナリー!」

「はい、カレンさん。
それでは早速私シュナイゼル兄様にお願いしに行きますね」

「ええ、じゃあ」

「「また明日」」

二人は楽しそうに生き生きと笑顔で手を振り合った。




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