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仲直りのしるし/1
 

 飴色の大きな目がジッとこちらを見下ろしている。
『何をしたの?』
 パチクリと瞬きした瞬間に、瞼に残っていた涙がポロリと落ちた。
『仲直りの印だぜコラ』
 そう教えれば、又、瞬きを一つして、フンワリと綿菓子のように笑う。
『へへ、じゃあ、仲直りだねぇ。ねぇ、手つなご?』
 差し出された温かい手が、もっと小さな手を握る。

 落ちていく夕日より、泣き腫らした目より、自分の顔はきっと赤かった。



「おいコラ! いい加減起きろ! 今日はテメェが朝メシ作る当番だろーが!」
 全然、降りてこない兄に痺れを切らして、部屋に来て見れば案の定、彼はまだ夢の中。
 強引に布団を引っぺがすと、ブツクサ文句を言いながら体を丸める。
「まだ、早いよぉ」
「オレはもう、腹減ってんだよ!」
 ペチペチ頬っぺたを叩いたり、引っ張ったりしていると、低血圧の兄は渋々起き上がった。
「早くしろ!」
「はいはい…」
 半分閉じかけてる目を擦りながら兄は弟に促されキッチンへ。
 そして、半分ウトウトしながらフライパンを火に掛け、卵を割り入れる。
「半熟がいいぞコラ」
「うんうん、ハンブクね。分かった分かった…」
「分かってねぇだろーがコラ…って、おい! フライパンが中華みたいに火ダルマだぞ!? 何やってんだ、この馬鹿ツナ!」
「んー? ん…って、わーっ! 何これ!!」
「馬鹿! 退けコラ!」
 何気なく視線をやれば兄の持っているフライパンが火を噴いていた。
 慌てて兄を退かし、ガスを止め、蓋をする。直ぐに火は消えた。
「ふぅー。危なかったねぇ…イタッ! 何するんだよコロネロ!」
「危なかったねぇ…じゃねぇぞコラァッ! もういい。オレがやる!」
 ガツン、と兄に拳骨を落としてから、手際よくフライパンに卵を転がす弟、コロネロに、兄であるツナは、最初からやってくれればいいのに、と、心の中で呟く。この家ではこれが日常だ。






 



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