姫と騎士
08
気配もなくこんなに近くに移動してくるだなんて、さすが一級騎士。
「面をあげろ、カイ」
「…」
カイはゆっくりと顔を上げ真っ直ぐにお兄さまを見る。
「どうしてここに?」
「王子、戯れが過ぎます」
お兄さまの質問にカイは簡潔に答えたけれど、ここにいる理由の答えになっていない。
「なるほど。それでおまえはわざわざ稽古を脱け出しここまできたのか」
「…休憩です」
二人のやりとりは私にはまったく意味が分からない。
お兄さまもカイも主語と述語がなっていないのにお互いに言いたいことが分かってるようで通じている。
せっかく久しぶりに顔を合わせたのに全然かまってくれないことに私は段々と不機嫌になる。
この私を一人除け者扱いをするなんて許せない。
「カイ、私には何か言うことはないの?」
「…?」
返ってきたのは私の気持ちをまったく分かっていない表情。
こちらからヒントなんて絶対にあげないんだから。
「………なにか?」
じっと睨んでいると困惑したように聞かれる。
あぁ、もう。
ずるいわ!
「カイは変わってしまったのね!昔なら私のことすぐに分かってくれたのに」
「…姫さま」
「自分だけ困ったみたいな顔しないで!」
「こらマリア、虫の居どころが悪いからといってカイに当たるな」
私とカイの間にお兄さまが入ってくる。
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