姫と騎士
06
「…ずるい」
にこりと微笑みを浮かべるお兄さまに怒りの感情がみるみるしぼんでいく。
さすが、まだ王でもないのに後宮をハーレム状態にしているだけある。
これがタラシの笑顔の魔力ってやつなのね、と1人で納得してしまう。
そして同時にひとつ、いいアイディアを思いついた。
「お兄さま、お願いがあるの」
「なんだ?」
「私を側室にしてお兄さまの後宮にかくまって?」
効果音をつけるとしたらきゅるんというであろうお得意の上目づかいでお願いをしてみる。
お兄さまは思いがけないことを言われたとばかりに度肝を抜かれたような表情。
「なにをバカなことを言っている」
「バカなこと?私は必死なのよお兄さま!私たち母親が違うから半分しか血が繋がっていないし、本当に何かするわけじゃないのだから大丈夫よ。ただちょっとお兄さまが周りに妹に手を出した変態と噂されてしまうくらいで、」
「やめろ、もういい」
途中で遮られてしまった。
いい案だと思ったのにお兄さまは賛成してくれる様子もなく話し始めた。
「おまえを私の後宮に入れるだなんてとんでもない。第一、一国の姫とあろう存在が側室に留まっていいわけがないだろう?」
「私だって幼い頃から王族として勉学に勤しんできたのだから分かっています。王女として生まれてきてきたのなら正妃となり王となり得る存在に寄り添い生きていく」
「そう、その通りだ」
「それを踏まえてお願いしているのよ、どうしても嫌なのお兄さま。他国の知らない王子のもとへなんて行きたくないの」
「マリア」
慰めるかのようにそっと頭を撫でられる。
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