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姫と騎士
05


「騎士たちの訓練を見ているの。ほら、カイがいるわ」


私が指で示した先をお兄さまが覗き見る。


カイは一礼をし、お兄さまは軽く手をあげてそれに応えていた。


「何か嫌なことでもあったのか?」


私たちはカイから…騎士団員たちから視線を外さずに話しをする。


お兄さまは私の浮かない表情を読み取ったらしい。


「私、顔も性格もなにも知らない相手と結婚しなければならないんですって。それも一週間後の成人の儀が終わったらすぐに」


「っ!父上はもうおまえに結婚のことをお話になってしまったのか!?」


お兄さまの驚きように私まで驚いてしまった。


それにこの言い方って…


「もしかしてお兄さま結婚のこと知っていらしたの!?…お父さまとグルだったのねっ、ひどい!」


私と同じブロンドの髪色に碧眼を持つお兄さまを睨みつけると弱った、と呟く。


「怒らないでくれ、私の可愛い子猫ちゃん」


「子猫じゃないわ!」


「マリア」


ふいにお兄さまに抱きかかえられ反射的に首に腕をまわす。


視界が高くなり、幼い頃私がぐずるとよくこうやってあやしてもらっていたことを思い出す。


思い出して、腹立ちが増してしまった。


「私はもう子供ではありません!降ろしてください!」


「おまえはいつまでも私の愛しい子猫だよ」


「子供扱いしないで!」


「悪かった。そうだね、マリアはもう立派なレディだ。こんなにも美しく育って我が国の宝物、自慢の妹だ。ほらそんな顔をしてはいけないよ」


「お兄さまのせいよ」


頬にそっと口づけをされ私は静かに目をつむる。


「機嫌を直してくれたかい?」

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