姫と騎士
04
本当はもっと近くで、稽古場に行って見ていたいけれど騎士団長に姫さまがいると騎士たちの気が散るからダメだと言われていた。
私が生まれてきて我慢していることなんて、いいつけ通り稽古場には直接行かないようにしてる、このことくらい。
私が美しすぎてみんな見惚れてしまうのは分かるけれど、騎士なんだからそこはしっかりして欲しいと思わなくもない。
はぁーあ…
これから結婚したら毎日なにかを…人生を我慢しなくちゃいけないの?
知らない男のもとに、住み慣れた土地を離れて西国に嫁ぐだなんて考えたくない。
それに嫁いでしまったらこの稽古風景も見れなくなってしまう。
つまらない、そんなの。
「あ…」
眺めていたら、稽古場からこちらを見上げる瞳と視線がぶつかった。
「カイ」
私が名前を呟くと、彼は『ひめさま』と返してくれたのが分かった。
お互い音は届かないくちぱくでのやりとり。
昔は隣にいて一緒に稽古場を見ていたのにカイはいつの間にかあの場所へ行ってしまった。
昔は「マリア様」だったのに、いまは騎士団の規則に従い私のことを「姫さま」と呼ぶ。
騎士になってからなんだか他人行儀になってしまったいまのカイには私は不満しかない。
「マリア、何をしているんだ?」
「お兄さま」
背後から声をかけられ振り向くと思った通りの人物がいた。
我が国の第一王子であるアルバートお兄さま。
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