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悩み


眠れなくて宿屋から抜け出し空に浮かぶ月を眺めた。
月は自分に光りを照らしただ眺めるだけで何も考えずに済む…そう感じていた時後ろから気配を感じた。
この見慣れた気配は…


「何をしているのユーリ」

「…俺はユーリじゃない。他人の空似じゃないか」

「僕が君を間違えるわけないよ。君はユーリだ」


どうしてこうも恥ずかしい台詞をさらりと言うのだろうかこの騎士は。
半分呆れていると彼が自分の隣に来た。


「お前にはお手上げだな」

「こんな時間にどうしたの?」

「お前こそ…お互い同じ理由みたいだな」


友人の顔を見て彼も同じ理由だとわかる。
彼も視線を空へと向けた。


「ユーリも何か悩んでかい?」

「いや、まさか」

「…君は一人勝手に決め付け抱え込むからね。ちゃんと話せる時は話すんだよ。それが仲間なんだから」

「…そうだな」


はぐらかしたのに、言い当てられ的確な答えをくれた。


「…フレン」

「何、ユーリ?…」


自分の方へと向いたフレンに顔を近付けさせ唇を重ねた。
夜空の月光が二人の影を作る。


「い、いきなり何を…」

「淋しかったんだよ」

「え?」

「お前に会えなくて」

「ユーリ…それってまさか…」

「じゃあ俺はもうそろそろ帰るな。カロルが起きて大騒ぎしそうだし」

「ユーリ!!」


背に彼の呼ぶ声を受けて宿屋へと戻る。
ほんのり赤く染まった頬を見られないようにしながら。


(ちゃんと話せる時は話す…か。)

それが話せそうにない悩みだ。
恥ずかしいのとからかわれる悩みだったから。


(言える悩みじゃなかったよな…)


フレンと会えない期間が長くて淋しくて悩んでいたなんて。



「アイツらには言えない…」


フレンは感付いたと思うが口に出しては言えない悩み。


end


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