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君に花束を
※R2最終回後


破れた写真の僕は笑顔のまま――



窓の外からたまたま見えた海を瞳にただ、映す。
綺麗とか悲しいとか何も抱かず無言で。

(何も…ない…)

あの日以来、俺は感情を失ってしまった…と周りには言われている。
自分にはそう思わないが確かに…辛いとか悲しいとか何も思ってはいない。わからない…

(ルルーシュ…)


「スザク」

「…」


自分に対する視線の先に体を向かせ、無表情に振り向いた。
そこには困ったような表情をするジノがいた。


「相変わらず無表情だなスザクは」

「…」

「ルルーシュが死んでから…そのままだ…」

「…」

「まるで…その時から時間が止まったみたいだ」

「何の用ジノ」


時間が止まったみたいだ…というが僕にはそう思ってはいない。
確かに喪失感はあるが、時は進みナナリーも成長し僕の時は動いている。
止まったつもりはない…


「時間まだあるからそこら辺行けよ」

「…僕は死んだ事になっているんだ歩けるわけ…と」


ジノに帽子をポスッと被らされ深く深く表情が見えなくなるまで隠される。
隙間から見えるジノの顔はやさしそうに笑っている。


「こうやって隠せばわからねーだろ」

「…」

「少し息抜きしろよ」

「別にいらないと…」

「……ルルーシュが変えた世界…見てこいよ」

「でも…」

「いいから」

「あ…ジノ」


ぐいぐいと手で押され、部屋から出されてしまった。
海が窓からではなく鴎の声がすぐそばで聞こえる辺りになると離され僕は振り向く。


「ジノ…」

「海綺麗だよな〜」

「…」

「…」


何も返事を返さないとジノから立ち去り、自分一人になる。
鴎の声…船の音、塩の匂い…


(何、ひとつ変わってないようにみえる…)

海と空は変わらず青い…ルルーシュがいた時と変わらず…


「でかいな…」

「…」


隣からの呟きに顔をあげた。普段ならば気にせず僕は海を眺めているのにこの時だけはあげた。
それはなんとなく感付いたのかもしれない。

――君に。


「え…」


思わず声をあげた。
フードを被っているが少し長い黒髪に…紫の瞳…

僕が破れている半分の写真の彼がそこにいた。


(嘘だ…そんなわけがない。)

あの日、あの時僕は確かに君を刺した。
見届けたんだ…真っ赤に染まる君を。

(いるはずがない…)

でも他人の空似でもなさそうで。

(なんで…どうして…)


「…」


彼は僕の視線に気付いたのは振り向いた。
視線があうほど彼に似ている…いや、そうだと確信に変わってしまう。

(ルルーシュ…?どうして…)

僕は心で叫ぶ。彼はただそのアメジストの瞳に僕を映すだけで何も発言しない。
何か言って欲しいのに、彼は何も話さない。

(なんで…)

久々に僕は怒りを感じた。もやもや苛々する。
なんで何も言わない。なんで、どうして…

(ルルーシュ…なんで…)


「…ルルーシュ」


沈黙を破ったのは僕だった。
苛々しく名前を呼んだ。


「ルルーシュ…だよね」

「…」


彼は何も言わない。
言わないのが腹立たしい。今まで生きていたのに何も言わずいたなんて。


「ねぇ、ルルーシュ」

「!!」

「何か…」


彼の手首を強引に掴んだ。相変わらず細くて男かどうか疑う手首。

(あれ…)

近くで瞳を睨むつけようと瞳を見ると違和感があった。
彼が不思議そうに僕を見つめていたからである。


「お前…」


演技とかの瞳ではなく本当に不思議そうに。
それで、僕はまさか…と思うが彼の言葉でそのまさかが当たってしまう。


「俺を知っているのか?」


――ルルーシュ?


「お前は一体…誰だ?」


ルルーシュの口から吐かれた言葉はずしりと重くのしかかる。
冗談とかじゃない。目が本当だと知らしめる。


「…」

「おい…」


(違う人物じゃない…)

違う人とかじゃなく彼だとわかる。
数年しか一緒にいたが…ルルーシュだということはわかる。
つまり…この彼は…


「記憶…喪失」

「あぁ…そうらしい」


ぼそりと呟いた僕にルルーシュは肯定をした。
なぜ、そうなったのかわからない。

でも彼は一度死んだ…もしC.C.のようにコードを持って生きていたとしたらその時のショックだろうか…


「?なぁ…どうかしたのか?」


強く握っていた手がゆっくり緩め僕の瞳は彼を映す。


「お前…?」


彼は僕の名前を呼ばない、わからないから。


「なぁ…」


僕はゆっくりと彼から手を離した。


end

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