部室のイスに座って見上げた空は、青かった。
そして僕は疑問に思った。
あの大きな銃声の音さえも、包み込むように消してしまうこの大きな空が、どうしてそれよりもちっぽけな僕の気持ちを消し去ってくれないのか、と。

「お前はまたそんなことを・・・」
「いい考えじゃない?」
「どこがだ」

聞きなれた声が僕の心に滲んでいって、

「ねえ、古泉くん。いい考えだと思わない?」
「ええ、とてもいい考えだと思います」
「ほら見なさい!」
「あいつを基準に考えるな!!」

こうやって涼宮さんのことを肯定することしかできない。
もっと、もっと、たくさんの言葉を紡ぎたい。そんなくだらない声さえも全て隠して、そうやって隠された言葉は繋がっていく。
なぜ隠さなければならないのか。その問いはいつでも僕を責めるが、答えはただひとつ。

"それが僕の役目なのです。"

「団長と副団長の意見は絶対だわ!」

例えば涼宮さんがこれを望んでいなかったとしても、僕は必ず涼宮さんの言葉をなぞる。
その理不尽な"役目"が、僕の足を重くしているんだ。

「そんなに拒まなくてもいいじゃないですか。何事も挑戦が大事、でしょう?」
「この野郎・・・」
「さすが古泉くんね!!」

今、涼宮さんの隣に立っている"あなた"のように、僕ももう少し何かを拒むことができたのなら。

いつもの同じ日々の、いつもの同じ景色を僕は見つめていた。
涼宮さんが笑って、嬉しくなって。
いつもと同じように、涼宮さんはそこにいる。はずなのに。

「ま、今日は遅いから解散!みんな、帰るわよ!」


もしも、いつも"報告"として伝える"観察記録"を、僕の"募る想い"で伝えられたなら。
"涼宮ハルヒ"という"神様の名前"を、"一人の女性"として書けたなら。
僕はいつも思っていた。3年前のあの日から。
昔とは少しだけ変わった町並みが、過ぎていく早さだけを思わせた。

「キョンは本当に分かってないのよ!」
「何がだ」

いつもの同じ帰り道を、いつもの涼宮さんと同じ歩幅で歩いていた。
涼宮さんが笑って、嬉しくなって。
いつもと同じように、涼宮さんは傍にいる。はずなのに。

僕ではない"あなた"へ向けていく、ひとつひとつの言葉がひどく優しすぎて、僕にとってはひどく残酷で。
その色褪せることの無い景色に背を向けて、唇を噛み締めて振り返る。

ただ一人。


「古泉くん!キョンに何とか言ってよ!!」

涼宮さんが笑って

「ええ、分かりました」

僕も笑った。



song by. M/o/r/a/n/





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