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Rainbow
10


仮眠室のベッドはセミダブル。
高校生男子が一人で眠るには十分な広さ。
元々は行事で忙しい時期に少しでも疲労を溜めないためにと作られた部屋。
……という名目。



戸惑ったような、怯えたような…そんな色が混じった瞳が俺を見る。
「かい、ちょ…」
二人きり。
甘やかして甘やかして、そうやって漸く恥ずかしそうに呼ぶ俺の名前。
二人で居るときに役職名なんかで呼ばれたくない。
そんなこと、当たり前だろう?
「れ・ん・ま」
「へ、ぁ…」
「蓮麻、だろ」
ぽかんと間抜けに開いた口に頬が緩む。
「お…こって、ない…の?」
「イラついただけだ」
「……どこがちがうのさぁ」
不満そうに口を尖らせるから噛みついてやった。
驚いて飛び跳ねるように逃げてこちらを見る。
真っ赤に染まった肌は仄暗い室内でもわかる。
「ぅ、ゃ…」
簡単に掴まえることが出来るのに、それでもジタバタと慌てる姿に和むとか…
やっぱりらしくなくて、でも案外悪いもんでもないと思う自分がいたりする。
「さっきのは、何だよ」
押し倒してやったシーツに散る髪へ指を絡めて引っ張った。
「…………べつに」
ぷ、と膨らんだ頬。
不貞腐れたような声色。
顔の造りからはあまり想像できない幼さを滲ませる表情。
一気に保護欲を誘うものになる。
そういうものは誰にも見せるなよ、と思う。
「俺が呼んだらすぐ返事しろ」
「……さりげなく俺様とか、どうなのさー」
文句を言って、でも恥ずかしそうに笑う。
「それで?」
「それで…?」
「さっきのは、何だ?」
笑った表情で一瞬固まり、うろうろと視線がさ迷う。
「だって」
見つめていると観念したのか、小さな声がぽろぽろと溢れていく。
「ゆー先輩と、ふたり…で」
さっき、秦野と給湯室に行ったことか。
「何もねぇよ」
「でも…っ」
少し潤んだ瞳が俺を見る。
「秦野とか、有り得ねぇ」
考えただけで鳥肌だ。
不快感が表情に出たのか、俺を見つめる目が丸くなる。
「…でもね」
「ん?」
躊躇うように告げた言葉に理性が吹っ飛んだとしても、仕方ないよな。





誰かと二人きりは いや。



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あきゅろす。
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