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Rainbow
9


給湯室から戻って柳原に渡された書類を持って椅子へ座った。
目を通しながら会長印を捺していく。
ふ、と感じた視線。
顔を上げたらなんだか潤んだグリーンの瞳とぶつかった。
物言いたげなのに、どこか抑えるような雰囲気。
見つめ返したら困ったように視線がふらついて手元の書類へ戻った。
「……」
でもその瞳は書類の文字は一つも写していないのがわかる。
「紗季」
「………なぁんですか〜」
揺れた細い肩。
呼べば恥ずかしそうにしながら、でもはにかんだ表情を向けるのに。
俯いたままの返事。
「こっち来い」
「や、ですよ〜」
仕事中だもん、とか言った横顔は強張っている。
溜め息を吐いたら、また細い肩が揺れる。
「紗季」
先程よりも強く呼んだ。
ぎゅっと噛み締めた唇は赤みを増す。
視界の端に心配そうな表情の秦野と柳原の表情が入る。
北原がチラリと俺を見て俯く紗季の肩を叩いた。
「相澤…会長呼んでる」
頑なにこちらへくるのを拒絶する態度は、気の短い俺にはあまり良くない。
手にしていた書類を放り投げて立ち上がる。
その音にようやくこちらをまっすぐ見た。
「ちょ…っ、杉内!」
慌てて立ち上がる秦野は無視をして肘を掴んで立ち上がらせる。
さっきと同じような動作だけど、今の方が力に加減がなかったようだ。
その証拠に小さな悲鳴が漏れる。
「来い」
そう告げて、半ば引き摺るように仮眠室へ連れ込んだ。

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