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Rainbow
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秦野に付いて入ったのは給湯室。
音を立てないようにドアを閉めたりして、なんなんだ。
「あのさぁ」
いつもより小さな声で、いつもよりも真面目な声。
「紗季ちゃんさ、危ないと思うんだ」
「知ってる」
そんなことは、以前からわかっていること。
自分の容姿に無頓着のアイツは一人でフラフラ動き回る。
隙だらけの警戒心が無い表情で誰とでも話す。
「あー…あぁ、まぁ…そうなんだけどね」
苦笑いをしたのは秦野も実感しているから。
それでもその表情を改めるようにして給湯室のドアを眺める。
「噂なんだけど」
秦野が言う噂は、大概が親衛隊からの報告で限り無く真実に近いもの。
だから…
「3年の一部に紗季ちゃんを襲う計画が出てる…みたい」
「誰だ」
「まだねぇ、そこまでわからないから噂なんだってば」
だけど早目に知らせときたくて、と呟いた。
「ここに居ないときは佐倉匡介が居れば安心だけど」
アイツは所謂不良というやつで、必ずしも学校に来ているとは限らない。
「紗季ちゃん自身は無自覚だし、やっぱり周りに気を配るのを忘れがちだし」
「…桜の下、か」
お気に入りの昼寝場所。
あまり生徒の近寄る場所ではないから今までは風紀の見回りと佐倉の存在でなんとかなってきた。
だけど裏を返せば人目が無いということは、危険と隣り合わせということ。
「…わかった」
「うん。こっちでも調べてみるから」
「頼む」
紗季ちゃんの親衛隊にも話しておくから。
そう言って給湯室から出ていった。
吐いた溜め息は思っていたよりも長く、重いものになった。

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あきゅろす。
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