[携帯モード] [URL送信]

Rainbow
4



細い指だと思う。
カタカタとキーボードを鳴らす指。
作業中は滅多に話をしない。
集中すると周りの音は遮断されるようだ。


1年の終わりに生徒会役員へ任命された相澤は生徒会室の豪華さに口をあんぐり開けた。
それから1週間ほどの引き継ぎ期間でおおよその業務を把握し、柳原が相澤の書類をチェックすることになった。
(庶務の北山は秦野が担当している)
パソコンは初心者だと言っていたが、気が付けば問題なく操れるようになっていた。
それと共に作業のスピードは格段に上がり、この事に関しては柳原も舌を巻くほど。
だから下校前の相澤の机上は書類が一枚も乗っていない。
それが当たり前の状態。





立ち上がって作業するディスプレイを覗く。
「今は何してる」
「んー…と、夏合宿の訂正が出たのでー、それとぉ…」
キーボードから降ろした指が書類を捲る。
「休み明けの大会遠征費のチェックでーす」
「夏合宿の訂正?」
「参加人数が増えたんですって〜」
「そうか」
頷いてまたキーボードを叩き始める指。
節の目立たない細い指。
「………」
そのまま掴んで噛みついてしまいたい衝動は目を逸らして飲み込む。
会計の座る席の向かい側は副会長の席。
まあ、だから。
目の前でプライベートなことをしたら、間違いなく柳原の逆鱗に触れる。
それはさすがに面倒。
自分の席には戻らずにソファへ向かい、腰を降ろして伸びをすると秦野がやって来る。
「なんか飲む?」
「あぁ」
ついでに休憩するよ〜、と声をかけて給湯室へ引っ込んだ。
柳原に続いて北山がこちらへやってくる。
給湯室からそれぞれのマグカップを乗せたトレイを持った秦野が戻ってきた。
「紗季ちゃんもおいで〜」
秦野が掛けた声は空振り。
作業を進める横顔は真剣そのもの。
「仕方ないなぁ…」
苦笑をして俺を見る。
「紗季ちゃん呼んで」
「無理だろ」
集中力は半端ない。
「だめ。放っといたらずーっとあのままだから」
譲らない秦野へは溜め息で返し、立ち上がる。
「休憩するぞ」
「…んー、お先どうぞぉ」
答えになってねぇよ。




[*Back][Go#]

4/30ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!