[携帯モード] [URL送信]

Rainbow
3



†††





「秦野?」
小さく頷く頭をじっと見る。
「秦野は幼馴染みだ」
「へ?」
ぽかんと口を開けた間抜けな顔。
「初等部に入る前からの付き合い」
家が近所だったわけではないが、親の仕事の関係で年に数回は会っていた。
同じ年と言う理由でお互いの性格は考慮されずに纏められていた。
自分自身も秦野も走り回って遊ぶ子供ではなくて、なんとなくポツポツと言葉を交わす。
そんな程度の交流だ。
実際に親しくなったのは中等部以降。


「えー…と、お付き合いとかは」
「するかよ」
考えたこともない。
きっと秦野も。
否定した言葉に驚いたような顔をするな。
「だって、れ…れん、まはゆー先輩の言うことは聞いてたから」
キラキラ光る髪留めで上げられた前髪。
額を出した髪型は似合うと思う。
俺の居ないところではして欲しくないが。
つるんとした額を撫でるように唇を這わすと、唇から感じる体温が跳ね上がる。
「な、に…っ」
「お前が秦野に懐いていたから」
「え、え?」
「実際は危機感ゼロな会計を心配してたのは相当数いるんだが」
これは本当のこと。
きっと佐倉匡介も感じていたこと。
「気を付けてるよー…?」
「外でごろごろ寝てるやつが、か?」
「うっ」
副会長の柳原はこいつを苦手としているが、それでも気にしていたほどだ。
生徒会室へ来るのが遅くなって嫌みを言うのは心配故。
認めないだろうが。
潜在的に嫌われるようなことがないのは見た目に反して素直なのと真面目だから。
「……秦野に嫉妬でもしたか?」
後頭部に回した指に髪を巻き付ける。
染めていると言っていたが、柔らかくてさらりとしている感触は気持ちが良い。
「嫉妬、なんかっ」
顔全体にぶわりと広がった赤。
自然と口角が上がっていく。
「ぅ…や、顔ちかぁいー」
ふにゃふにゃとした口調での文句なんて、文句にもならない。
「紗季」
遊び慣れた雰囲気に見えたのは実際の相澤紗季を知らなかったから。
「逃げるなよ」
そう釘を差してから目の前の唇を食んだ。


[*Back][Go#]

3/30ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!