ぷよ7ネタまつり
りんご+ARSS
「……でんしゃ?」
「電車」

見上げる。見渡す。連なった箱。車輪の下に伸びているのは、轍、とは、違うらしい。これに沿っては進むらしいが。
先導する生き物がいない。魔力も感じない。ならば何で動くというのば、この箱は。

「電気だよ」
「デンキ?」

ものめずらしそうにそれを見送るアルルたちにりんごが説明すると、聞き慣れない言葉にアルルは再び首を傾げた。後ろのルルーも珍しく呆けたようにそれを見上げている。サタンは何かを知っているのかうんうんと頷いていたが、シェゾは眉をひそめてその鉄の箱を睨んでいた。

その反応にさすがのりんごも一瞬何も言えなかった。今時どの田舎から出てきてもこんな反応をする者はいない。
そういえばごたごたが落ち着いてから彼女らを改めて此方に招いた時の感想は、窮屈だとか、空気が汚いだとか、そんな、まるで大自然の中で生きてきたかのようなそんな類のものだった。

どれだけの田舎、むしろいっそ無人島か何かから出てきたのではないかと思わせる反応。これが文化、というか世界の違いか。

何しろ格好からしておかしい。アルルはまぁ制服だったからよしとする、ルルーあたりならまだ芸能人かセレブか何かで通せば不自然ではないが、シェゾまでくると完全に…、否、まだ、いわゆるヴィジュアル系のバンドマンか何かかと言えば通じるかもしれないが、兎にも角にもサタンは完全にアウトだった。
角を付けて平気で町を歩いていたら白い目は必須。

しかたがないからアルル以外にはとりあえず目立たない様に着替えてもらい、不審な目で見られることはなくなった(サタンには角をしまえないかと頼んだら普通に消してくれた)が、如何せん見目が良いので注目は浴びている。

更にはそんな彼らが電車を前にもの珍しそうに観察しているのだ。これはもう田舎者どころかどこぞの箱入りのお忍び外出レベルである。

電車を知らない割に様相は原始的ではない。りんごは試しに聞いてみることにした。

「電気…しらないの?」
「雷のことでしょ?火、水、土、風、雷。5大元素のひとつ」
「あ…いや…まぁ」

なんだろう。間違ってはいないが何か違う気がする。りんごが黙るとふと気づいたようにサタンが口を開く。

「……あれだ。エネルギーという認識は我々にはないな」
「そうなんですか?」

ああ、と頷いたサタンに今度は別の疑問がわいてくる。仮に電気が無いとしたら。

「明かりとか、どうしてるんですか」

素朴な疑問だった。しかしそれにお忍び貴族たちはさも当たり前のようにこう返す。

「え…蝋燭?」
「ランプとか」
「ライトがあるだろ」
「光属性の魔導を蓄積しておける吊り下げ式の点灯魔道具もあるぞ」

原始的なのか最新型なのかわからない。おそらく最後の魔導具とやらが自分の認識する電気に近いものになるのだろう。多分。
りんごは少しだけいやな予感がしながら他にもいくつか聞いてみることにした。

「…ガスコンロ…は無いか…火は?」
「マッチがあるけど、ファイヤーが主かな」
「水とか…」
「井戸水か…あとはホットを冷やすかアイスを溶かすか」
「冷蔵庫は…」
「保存庫のこと?冷却魔導を蓄積した」
「冷暖房!!部屋をあっためたり冷やしたりする…」
「暖炉とか…あとはマントの下に冷却魔導を忍ばせておくと涼しいよ結構」

続いた質問にりんごは本格的にどうしようと思い始めていた。最初に出てくる道具こそ古臭いものなのだが、彼らの二言目、それらが決まってファンタジーだ。
異文化交流もいいところである。

「え、ちなみに長距離の移動とかはどうして…るの?」

疲れてきたので話を電車に戻す。
すると4人はぼんやり考えるように間を置いてから、やはり当たり前のように応えた。

「徒歩?…だよね」
「わたくしはたまに馬車も使うわよ、修行じゃないときはね」
「飛ぶとか?」
「…テレポート」

後ろに行くほど返答がおかしい。馬車まではまぁ時代遅れでいいが、生身で飛ぶとか言われてもピンとこないどころかテレポートなんぞ一体どこの宗教だ。

りんごは質問を止めてしばらく考えるように顎に手を当てる。とりあえず現状を整理することにした。つまり、つまりはだ。

「…要するに、私達の電気でまかなう部分を君達は魔力という不思議パワーで補っているわけだ」





とりあえず、ファンタジーな現実を受け止めてみることにしてみた。
正確には、それしか出来なかった。

「とりあえず、電車、乗ってみます?」



(異文化交流の道は思いの外険しいのでした)




−−−−−−−−
異世界美味しいです。
魔導世界には「電気」の認識無いよなぁと思いましてですね。その辺突き詰めたら楽しそうですよねという。電話とかテレビとかの話もいつかしてみたい。
テレビなんてないよなぁ…連絡方法とか今でも手紙とかっぽい。伝書鳩とか。

ていうかシェゾとか絶対車に攻撃とか仕掛けますよ信号機とかわかりませんよwwww
黙ってれば本気でどこぞの国のお貴族様ですよ。


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