ぷよ7ネタまつり
※エコロ×シェゾ※
今度は何処だ。
眩暈とともに瞳を開くとシェゾは意識を引き上げた。


先ほどから空間を強引に渡らされている、誰の仕業か知らないが、先ほど知り合いの少女に会う事もあったから(もうひとりは初めて見る少女だったが)、どうせまたあの魔王が変な遊びでもしているのだろう。
別に初めてでも無し、3回も4回も続けばもう仕方が無いから付き合ってやろうかという感情も芽生えてくる。

と、思っていたのだが、今回は少しばかり勝手が違うようだ。

引き上げた空間はどこか慣れ親しんだ空気を持っていて、だが纏わりつくようなそれは確かにシェゾに不快感をもたらした。
其処は。

(闇の空間…狭間か?)

シェゾは意識の警戒レベルを引き上げる。
サタンの遊びであれば警戒はしなくても問題はない、が、どうにもコレは違うような気がした。もしくは遊びの工程で何か不具合でもあったか。

空間内の魔力を探ってみれば、何人か見知ったような感覚がある。分かりやすいので言えば、あの彗星のものとか、赤ぷよ帽の少女のものだとか、本の魔物に取り付かれた少年たちだとか。

(サタンと、アルルは…いないか)

探りながらこの場にいない人物の人選も気にかかる。
常に物事の中心にいるようなふたりが抜けているということは、やはりこれは何らかの手違いではないだろうか。

用事の済んだサタンが自分たちを放って遊んでいる可能性も考えたが、多分それもないだろう。

この空間内でシェゾが意識を保っていられるのは彼が「闇の魔導師」で、闇に愛され、統べるものであるからこそ、辛うじて呑まれることが無かっただけで。闇の狭間に放り込まれたら、普通の人間は呑まれて彷徨い続けるしかないのだ。
自分だけならともかく、サタンがそんな危険な真似を、ルルーやあのプリンプとかいう平和な世界の人種にやるとは思えなかった。

(とりあえず近い奴から出してやるか)

状況はわからないがやるべきことは明確だ。彼以外に取り込まれた他の奴が闇に呑まれる前に早急に出してやる必要がある。シェゾはもう一度意識のレベルを引き上げてシェゾが空間内を探った。

なんで自分がこんな尻拭いみたいな真似をさせられているのか不満はあったが、このまま放置しても後味が悪いのが事実。まして此処で(これがサタンの不手際であったとしてもなかったとしても)恩を売っておけば後々に活用できるだろうと踏んでのこと。

思って、空間を。



「あれぇ?どうして意識があるのかなぁ?」

ぬらりと。そんな効果音が合うと思った。空間を渡る前に耳を囲うような声がシェゾの意識を捕らえてシェゾは息を呑む。

同時に先程から感じていた不快感が形を成してシェゾの目の前に現れた。闇の空間に溶け込むように存在していたそれは、ゆっくりと彼の知っている姿を形作る。

「此処はぼくの空間なのに」

頭の上に小さく結われた見慣れた髪型、左肩と胸のアーマーに女の子らしい膝丈のスカート、長身のシェゾより遥かに低い背。

アルルの形のそれ。
だが。

「……アルル、ではないな。ドッペルとも違うか」
「御名答」
「何の真似だ。そんなモロバレの格好で」
「模しやすかっただけだよぉ。いまアルルちゃんの体借りてるし」

言いながらそれはくるりと回る。シェゾは瞬時に頭を切り換える。言い方が気に入らないそれが何であるかはわからない。

わかったのは、先程の口振りから、この空間絡みはコイツの仕業だということ。

魔王がどう咬んでいるのかは知らないが、この空間にいないとなるとひょっとして表でも何か起こっているのだろうか。アルルの姿を模しているのも気になる。体を借りていると言ったが、空間の外で
は何が、そこまで考えてシェゾは思考をやめる。

どのみち今自分が考えてもどうにかなるとは思えない、それよりもやるべきことはほかにあった。

ようするになんであれ、こいつをなんとかすればいいのだろう。
シェゾは瞳を細める。

「怖い顔しないでよ。変態みたいだよ」
「……ほざけ、その手にはのらん」
「ちぇーっ」

闇の空間では精神力がものをいう。意識を乱したら闇に呑まれることを知っているシェゾは相手の挑発をあくまで淡々と返した。
その反応に口を尖らせたそれの、子供の素振りそのものの動きに、尚更不快感が増す。そのまま切り捨ててやろうか。

シェゾは息を吐き手を伸ばす。この空間が奴の作り出したものだとすれば、それを切り裂きさえすれば良いはずだ。すると目の前のそれもシェゾのやらんとしたことに気づいたか、散乱していた意識をシェゾに移した。

「けど、今みんなに戻られても困るんだ」
「そうだろうな、わざわざ闇の狭間に閉じ込めるくらいだ」
「うん、だからお兄さん」

ぼくと遊ぼうよ。

言った瞬間だ、空間が圧倒的比重を増してシェゾの四肢をとらえにかかる。
予想外の角度からの攻撃にシェゾが反応をする前に、目の前の『アルル』が、笑った。

「ねぇ闇の魔導師シェゾ・ウィグィィ?」

ぞわ。
シェゾの本能が反応する。まずい。
その言葉自体は別段珍しいわけではない、気にしなければ気にならない一言。
だが、聞き逃してはいけないと頭の中で警鐘がなった。

ソレは何故、自分が闇の魔導師だと知っている。
ソレは何故、自分がシェゾ・ウィグィィだと知っている。

名乗った覚えは、ない。

「!!」

本能に一瞬身を引いたシェゾの足元がゆがんだ。
のぞりと音を立てて闇が這い上がりシェゾの足を絡め捕る。
シェゾが反応するよりも早く、目の前のソイツが声を上げて笑った。

「別に珍しいことじゃないよぉ。僕はたびびとだから」
「ん…だと…っ!」

奥歯を噛んで己の油断に顔をゆがめたシェゾを尻目に、そいつはアルルの姿から変化した。
一度霧散するように溶けてから、目の前に現れたのは小さな少年。
子供の姿をしたシェゾだった。

「ぼくはすべての次元、すべての世界、すべての時を知ることのできるんだ」

言いながら徐々に成長をしていく。
幼児から少年、記憶に古い学生のころから現在の青年、それから今よりももう少し後になると思われる姿にまでなったところで表情を消した。
だが表情は動いていないが、空気が笑っている。どうにも気持ちが悪かった。

「だからわかるよ、お兄さんのこともなんでも」

それはシェゾと同じ顔で、だが圧倒的に無邪気な声音で手を伸ばしシェゾの頬を撫でた。
触れたその手が、まとわりつく空気と全く同じ感触をもっていたことでシェゾは初めて気づく。
この空間は、『彼』そのものではないのだろうか?
そいつはなおも楽しそうに喉を鳴らしたまま、それでも表情はそのままに、口を開く。

「言おうか?」

シェゾは戦慄を覚える。
彼は淡々と紡ぐ。

無意識に身体が、震えた。
駄目だ、聞いては。

「本名シェゾ・ウィグィィ。別名『神を汚す華やかなる者』。180歳、3月16日生まれ。……父親違いの兄がいたが、表向きは一人っ子長男として産まれ育てられる。比較的裕福な家庭で、家庭環境は平穏、魔導学校での成績は優秀、将来有望視されていたが、14歳の時に修学旅行の廃都ラーナにて先代の闇の魔導師より呪いを植え付けられてから環境が一変。闇の魔導師としての生を余儀なくされる。その翌年優秀な魔導師であった父親を」
「黙れ!!」

遮るようにシェゾが、吠える。
その行動に初めて目の前の『シェゾ』がその表情に笑みを灯した。
先ほども言ったが、闇の空間では精神力がものをいう。意識を乱したら闇に呑まれるのだ。

どうしようもなく身体が震えた。
何故コイツがそんなことまで知っている。
えぐるように紡がれた言葉は、完全にシェゾを捉えていた。

そいつはシェゾの瞳をその手で塞ぐと、耳元で囁いた。






「ねぇ、ぼくとあそぼうよ」





空気がどこか遠くで笑い声をあげるのを闇の底で聞いた。



(to be continued ...?)
−−−−−−−
ぷよ7でりんごちゃんたちが頑張っている舞台裏でのエコシェ妄想。
続くかどうかはわからないけど続くとしたら裏です。
ていうシェゾの傷をえぐりながらエコシェが舞台裏で行われていたのね!とうどうしようもない妄想を繰り返しているのでした。

変態ですみません本当に。

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