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13*


 素肌の上に添えられていた南波の手が明確な意図を持って動き出したのは、次の瞬間だった。

「ッあ……ん……!」

 薄く筋肉のついた胸の形と肌の感触を味わうように、厚い掌が千明の胸元をなぞり上げた。

 そのまま尖端に辿り着いた指先が、薬の影響で既にぷっくりと形を成した乳頭を捏ね回す。

「ぁ……っ、何……?」

「……大丈夫だ。何も怖いことはしねえから、そのまま力抜いてろ」

 常ならば触れられることすらない部位への性的な刺激に吃驚したのだろう。

 縋るようにシャツの裾を握り込んでくる千明の首筋に優しく口づけを落とすと、南波はもう一方の胸の突起を口に含んだ。

 弾力のある肉粒に歯を立ててから、舌先で淫猥に舐めねぶる。

「ふ……ァ、あ、ん……っ」

 指と舌──両胸の先端を同時に嬲られて、千明の身体がびくびくと断続的に跳ね上がった。

 完全な酩酊状態にあるからか、あるいはこれも媚薬の影響だろうか?

 乱れた吐息に混じって零れる甘い声音には戸惑いも、抵抗も、羞恥の色も一切ない。

「……あー、畜生。素直にイイ声で啼きやがって」

 嬲られるままに反応を返す少年を肉食獣めいた目で見下ろして、南波は喉の奥で低く唸った。

 意中の相手の身体に思うさま触れ、その啼き声を鼓膜に流し込まれたせいで、今や自分まで心身ともに昂ってしまっている。

 もしもこの年下の少年が既に己がものであったなら、この場で貫いて、白濁で全身がぐちゃぐちゃになるまで犯していただろう。

 だが、眼下に組み敷いた少年は未だ自分のものではない。

 ましてや想いを告げたときに“返事は急かさない”などと豪語してしまった手前、ここで最後まで手を出すなんて真似は、たとえ死んでも出来ることではない。

「生殺しっつーのは、まさにこのことだな……千明、てめえ、俺の理性に感謝しろよ?」

「……っ、竜、さん……?」

 どうやら自分の名前が呼ばれたことに気づいたらしい。

 半ば恫喝めいた低音で唸った南波の顔を、潤んだ瞳が見つめ返した。

 匂い立つような媚態とは裏腹に、小さく双眸を瞬くその仕草はどこか幼さすら感じさせる。

 一点の曇りもない、未だ穢れを知らぬ子供のように澄んだ眼差し──

 だが、しかしその一方で、それが男の愛撫をねだり、誘っているようにも見えるのは何故だろう?

「……お前、俺がそこらに転がってる普通の野郎と同レベルのチンケな理性の持ち主だったら、今頃、酔っ払ったまま放置プレイされて自己処理も出来ずに延々苦しんでたか、逆に失神するまで突っ込まれて中出しされまくってたぞ」

 ともすれば心身を支配しそうになる凶暴な衝動を抑え込みながら、南波はいよいよ押し倒した相手のベルトに手を掛けた。

 スラックスの前を片手で寛げると、下着ごと膝まで引き下ろす。

「…………っ」

 露になった千明の下肢は、完全に芯を持って屹立していた。

 思わず息を呑んだのは、下半身を剥き出しにされた少年自身ではない。

 南波の方だ。

 事前にある程度の覚悟はしていたものの、実際に目の当たりにした光景には、想像以上にくるものがある。

 固く勃ち上がった肉欲の証とその下の膨らみ。

 緩やかな大腿の脚線。

 両脚の狭間から微かに覗く臀部の肉──

 目前に曝け出された秘所を注視したまま、南波は無意識のうちに口腔内に溜まった唾を嚥下していた。

 あとコンマ1秒我に返るのが遅かったら、中途半端に脱がせかけたスラックスを引っこ抜いてM字開脚させた挙句、股間を視姦しながら鬼畜な言葉攻めをカマしていたに違いない。

「………………は、こりゃ、ちんたら介抱してたんじゃ、マジで襲って突っ込んじまうのも時間の問題だな」

 現に今の衝撃で理性が半分灼き切れてしまったのか、右手が無意識のうちに開脚をさせようと千明の膝頭に向かって伸びている。

 それを左手で抑え込みながら、南波は口端を吊り上げた。

 ほとんど痙攣しているような笑い方になってしまったのは、ここにきて己の理性の限界に危機感を覚え始めたからだ。

 そう。

 もはや悠長に生温い愛撫など施している場合ではない。

 このままでは介抱を終えるより先に、完全に理性が灼き切れてしまうかもしれない。




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