02
「そ・れ・よ・りー」
ゴリマッチョに向けられていた俺の意識を引くように、媚びるような笑みを浮かべて貴雅が躙り寄ってきたのはそのときだった。
背後から抱きついた俺の頭に片頬をくっつけると、駄々っ子みたいにぐりぐりする。
「ねー千明、いいでしょ? お花見しようよー。この学校の裏庭にね、日当たりがよくてお花見には持って来いのいい場所見つけたんだー。本当は食後の青姦のことも考えると二人っきりでお花見したいところだけど、今回は特別にわんことヨッシー君たちも一緒でいいからさー」
「いやたとえ二人きりになったとしても青ホニャララなんてしないから。絶対しないから」
「えぇえ〜?」
何言っちゃってんの、えぇえ〜じゃねーでしょえぇえ〜じゃ。
18禁星のお花見コースじゃそういう破廉恥なホニャララが定番なのかもしれませんけどね、ここ地球ですから。
地球じゃ飲み食いして騒いで終わりですから。
不満があるならエロスの星に帰れ。
「……だけど、まあ──」
浅く溜息をつくと、俺は未だべっちょりとくっついているエロプリンスを微かに眇めた横目で見やった。
一拍置いて嘆息混じりに了承する。
「愛ちゃんたちも一緒にっているならまあいっか」
「ほんとう!? わぁい、やったー! 俺、頑張ってヨッシーたちの前で青姦公開プレイするからどんと任せ」
「それ以上そのネタ引き摺ったら、お前の有り得ねえところからお花咲かすけどいいんだな?」
「…………」
よーし、静かになった。
「──つー訳で」
笑顔のままぴたりと口を閉ざした猥褻物から視線を転じて、俺は愛ちゃんたちに目を向けた。
「そういうことになったから俺、今日は貴雅と外で昼飯食べるけど、愛ちゃんたちはどうする?」
「……俺、千明と一緒に行く。変態と二人っきり、超危険」
その視線を受けて真っ先に答えを返したのは、未だ俺にくっついてた貴雅を押し退けて割りこんできた愛ちゃんだ。
続いて変態に代わってぺとっと俺に密着した無口わんこの隣で、吉澤がだらけきった視線で手を上げる。
「ハイハーイ、俺もお花見参加の方向でぇー。ぶっちゃけ桜の下で飯食うだけなんて超つまんなそーだし、ちっともSっ気擽らんないんだけどさぁ、千明が行くなら俺も行くー」
「……いや吉澤、お前Sっ気って」
「えー、何? 千明はお花見にSっ気擽られんのぉ?」
「…………イエ何でもないっす」
判断基準SМなのかとか俺はお花見にSっ気を感じるような訳のわからん感性持ってるように見えんのかとか、突っ込みたいところは山のようにあるけど深く考えないしよう。
取り敢えず吉澤も参加すんのね。
っていうことは、残ったのは……
「ミッチーたちはどうすんの?」
まだ意向を尋ねていない三人組──元・吉澤腰巾着三人衆を振り返って、俺は尋ねた。
マリモヘア市川と巨漢坊主ニッシー、それからロン毛の三橋。
黙って俺たちのやりとりを眺めていた不良トリオに向かって問いを発する。
「吉澤もこう言ってるし、三人も参加しとく?」
「……あー、俺と西は別に参加してもいいんだけどな」
代表して口を開いたのはミッチーもとい三橋だった。
長髪の下の女受けよさげな顔に微妙な表情を貼りつけると、これまた微妙な眼差しを傍らに投げ掛ける。
「問題はー……」
「あー……」
言葉を濁したミッチーの視線が、どこを……っていうか正確には誰を指しているのかを悟って、俺は微妙な表情を浮かべた。
三橋の視線の先、整っちゃいるが人相の悪い顔をあからさまに引き攣らせているのはマリモマン市川だ。
一度、乳首を開発されかけて以来、この短気な不良はそりゃもう心の底から貴雅を苦手としている。
一緒に仲良くお昼ご飯なんて、もはや市川にとっちゃ性的拷問の域だろう。
……いや、ほんとあの開発未遂事件のときに見せたエロス星人の指の動き、マジで変態そのものだったしね。
ありゃトラウマになっても仕方ない。
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