小説 私と彼等。 (※『オレと家族。』番外編。サフィール視点) レプリカは、生まれた時点で被験者(オリジナル)とは違う、一個体だと言うことを。 貴女達に教えられました。 「ようこそ、オレ達の世界へ!!」 「………は?」 事の起こりは数日前。 その日は何時も通り、研究をし続ける筈でした。 しかし、戻ってきたヴァン曰く。 ファブレ公爵邸に戻した『レプリカルーク』が起きない。 一体何が原因なのか判らず、『レプリカルーク』の製作に携わっていた私に次のバチカル行きの同行させる。 とまぁ、命令してくれた訳です。 いいんですけどね。アレでも『一応』上司ですし。 確かに『あれ』は私の最高傑作。 一体何故そんな事に? 医師免許を持っている私は、首を捻りつつ医療道具を念入りに確認し、鞄に詰め込みました。 そして今日。 訪れたファブレ公爵邸で、私が医師だと告げると、『レプリカルーク』の部屋にアッサリ通されました。 ………少しは警戒心とかは無いんですかね………。 「確かに寝ていますね………」 溜息を吐いて、さて、ちゃんと調べないと、と『レプリカルーク』に改めて向き直ったら。 寝ていた筈の『レプリカルーク』が目を開け、私を見てニヤリ、と笑ったのです。 え、と声が出ていたかどうか。 一瞬後、光が爆発して―――。 気付けば私は、薄暗い所に居ました。 そして冒頭の台詞に戻ります。 声に慌てて振り返ると。 そこには、キムラスカ王族の貴色持ちの男性と少女が居ました。 男性は炎色の髪と、澄んだ緑玉の瞳。 少女は熟れた苺色の髪と、朝露に濡れた若葉の瞳。 そして男性の腕の中にスヤスヤと寝ている赤ん坊が。 ………えぇと? 「『オレ達の世界』………?」 「そ。いやまさか、ホントにやっちまうたぁ思ってなかったんだがなー」 「我がやれる事ならば何でもするとも。この子の為なら殊更に」 からから笑う少女と、愛おしいと言わんばかりに腕の中の赤ん坊を見ている男性。 呆然としている私の様子に気付いた少女が、私にニヤリ、と笑ったのです。 ………おや? つい最近、似通った笑顔を見たような? 「察しのいい奴ぁ結構好きだぜ。サフィール・ワイヨン・ネイス博士?」 男の様な口調で、少女が私に話し掛けます。 ………っていうか!! 「何故貴女がその名前を!? 此処は、貴方方は一体!?」 ちょっとしたパニックに陥った私の叫び声は、意外とこの空間に反響しました。 結果。 「………ふぇぇ………っ」 「あ」 「ルーを頼む。こっち来てもらおうか、博士?」 ………泣きますよね、赤ん坊。 男性はやがて本格的に泣き出した赤ん坊をあやしながら揺り籠へと向かい、少女は有無を言わさず私を引き摺ります(この細腕の何処に、こんな力が!?)。 「いきなり大声出したら、誰だって吃驚するだろうが。違うか? もうすぐ三十路のネイス博士?」 「そ、れは………すみません」 私はと言えば、反省の意味を込めて、ホド独自の座り方である正座中です。 長いのか短いのか判らない時間が過ぎ、少女から得た情報を整理します。 少女はルキフェル。愛称はルキ。 男性はローレライ。第七音素意識集合体本人(………人?)。 赤ん坊は『レプリカルーク』、ではなく、ルー。 彼等が居るこの精神世界に、何故私が来れたのかはルキ曰く、ローレライマジックだそうで。 また、ローレライがユリアを毛嫌いしているのには驚きましたが、理由を聞いて納得しました。 ヴァンの計画も知ってましたし。 アウトです。詰みです。泥舟に乗るのは誰だって厭です。 とっととヴァンと手を切ろう、と決めました。 それよりも気になるのは、ルー達の事でした。 レプリカだって怪我や病気をするのだと。 生まれ方が違うだけで、被験者と同じ様に生きているのだと、ルキが言ったのです。 ………何故、こんな簡単な事に、今の今まで気付かなかった、私!? こうなると、研究者より医師として彼等が心配になります。 腹は括りました。 タイムイズマネーです! 「私は、貴方方の協力、及び主治医となりましょう。貴方方の元の計画を少しばかり弄れば良いと思います。それからヴァンについてですが、私が情報を流します。宜しいですね? はい、終了」 「や、すげぇ有り難いけど。良いのかよ?」 困惑気味のルキに頷きます。 「では我等は家族だな」 ローレライの台詞に感動です。 その後、家族には本名で呼んで欲しいとお願いした所、快諾されました。 アリエッタを引き合わせ、彼女が家族の新たな一員となった事は、言うまでもありません。 次々と増える家族に、ローレライが『家』を用意し、共に『鍵』となる響律符を作って家族に渡します。 ………色々反則的な家族ですが、とても充実しています。 '12.11.01 [*前へ][次へ#] |