小説 オレと聖獣。 (※チーグルの森) 半円態若しくは半球態状の建物の中は、音が反響する。 要は。 うるっせえぇ、この害獣共が!! テメェ等の声は甲高いから余計響くんじゃあぁぁ!! 前世知識で知ってたものの。 実際耳にすると、本ッ気で響く。主に頭に。 『中』の二人は大丈夫だろうか? 響律符(キャパシティ・コア)でもあるソーサラーリングを、両手で持ったチーグルの長老と導師達が話し込む。 その間オレは樹に寄っ掛かって休んでいようと思っていたが。 「では村の食料を奪ったのは、仲間がライガに食べられないためなんですね」 「………そうだ。定期的に食料を届けぬと、奴らは我らの仲間をさらって喰らう」 「………ひどい」 お い ? 聞き間違いじゃ………ねぇな。 「何がひどい。この世は所詮、弱肉強食だろうが。しかも縄張り燃やされりゃ頭にも来るだろーよ」 「確かにそうかも知れませんが、本来の食物連鎖の形とは言えません」 「いいや、先刻も言ったが、この世は弱肉強食だ。この場合、本来ライガが強者でチーグルが弱者。弱者たるチーグルが淘汰されて然るべきなんだよ。それを第三者であるオレ達が首突っ込んで、引っ掻き回すのは如何かと思うがな」 「そんな………ですが、チーグルはローレライ教団で認定されている聖獣です。僕はライガと交渉しようと思います」 「魔物と………ですか?」 そこからの降りは、正に三流どころか五流の茶番劇ともいうべきものだった。 当然オレは(余りに下らなさすぎて)、樹に凭れて口を噤んで成り行きを眺めていた。 まだチーグルの犯罪に対する処罰を聞いてねぇんだが? 『中』の二人が、これが聖獣かと嫌悪も顕にぶーたれていたが、所詮阿呆なんだし仕方無ぇよと言っておいた。 原因を作った仔チーグルだが、そもそもソーサラーリングの管理を怠ったのは長老だ。 しかも、その仔チーグルをライガとの通訳に寄越すって………チーグル族はよっぽど滅びたいのか? 仔チーグルのミュウを加え、ライガクイーンの元へ向かっている時だった。 川が道を遮っていた。 「ライガの住み処ってこの先なのよね?」 「そうですの。この川を渡った先ですの」 「………川を渡るにしても、橋が無いな」 「仕方ありませんね。川の中を歩きましょう」 オレは溜息を一つ吐き、ミュウを持ち上げる。 「………おい。炎が噴けるんだったな」 「はいですの!!」 「なら、向こう岸にある、あの木の根元に炎を噴け」 ミュウの炎が対岸の木に命中し、木を橋がわりに渡る。 「ルークは機転がききますね」 「………」 ミュウを道具袋に突っ込み、無言で進む。 すると導師にC・コアを持っているか訊かれた。 病弱設定のオレが嫌々前衛に居るんだもんなあ。 無言を貫いていると。 「あの、これをルークに………」 「C・コア?」 「はい。C・コアというのは、譜術を施した装飾具のようなものなんです。譜の内容に応じて身体能力が向上します」 導師から渡されたそれ。 『傲慢な』という意味のC・コアのストレだ。 正直要らん。 だってねぇ、ネビリムから貰った最強のC・コア、トゥッティがあるし。 ま、タダでくれるんだからオレの懐が痛くなる訳でなし。 「有り難く貰い受ける」 そんなこんなでライガクイーンの元へ行くんだが。 救助対象のライガクイーンの機嫌を損ねるのは確実だろうなと思うと、本ッ気で胃潰瘍になりそうなオレだった。 '13.01.15 [*前へ][次へ#] |