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小説
2



「雨都(うきょう)先生!! 擬人研究所主催で、スタンプラリー実施してるんです!! 参加しても良いですか!?」


同居人で生徒、狐の擬人化動物である秋雨(あきさめ)の剣幕に圧され、俺はただ頷くしかなかった。






2.町内スタンプラリー






日頃の運動不足が祟り、俺は早々に音を上げた。

秋雨は秋雨で、色々動き回れるのが嬉しいようだ。

途中途中で擬人化動物たちが秋雨と出会い、少し話をした後スタンプラリーを再開する。


(…ま、勉強と仕事ばっかりじゃなあ…気分転換には良いかな)


楽しそうにしている秋雨に手を引かれて歩く。


「…元気だねぇ」


年寄り染みた独り言は、秋晴れの空に吸い込まれていった。


「こんにちわ!」

「あ、こんにちわヨウタさん!」

「んあ? ああ、こんにちわ」


声を掛けてきたのは、明るい茶髪の元気な青年、顔馴染みのヨウタさん。
驚くなかれ、彼はシオンさんと同じ擬人研究所の職員である。
世間は狭い。



…そっか、このスタンプラリー、擬人研究所が主催だっけ。
秋雨があんまり楽しそうだから、すっかり忘れてた。


「雨都先生と秋雨さんも参加してたんですね! 実は今日はチェックポイント要員でして。はい、スタンプ十個です!!」

「ありがとうございます!! やったー!!」


思わぬ出来事に喜色満面の秋雨。良かったなと頭をグシャグシャ撫でる。
何するんだと怒るけれど、笑顔で言っても威力半減だぞ?



俺たちはヨウタさんと別れ、住宅街へと向かう。


「そういや秋雨? スタンプ集めたら何貰えんの?」

「それが…結構集めないと駄目なんです。本当は景品全部欲しいんですけど…」


秋雨の手元のチェックシートを覗き込む。

景品は写真にアクセサリー、服に本。

…スタンプ数もハンパ無い。

あー、確かに足で稼がねぇと全部どころか一つ二つが限度だわ、これ。

一番少なくても、スタンプ五十個は一日じゃちと無理だ。

そろり、と視線を秋雨に戻すと。


(…やべぇ。へたれた耳の幻影が見える…)


落ち込んでいる秋雨に、もう少し回ってから次の日も挑もうと伝えると。


(………嬉しそうだねー…)


一転して喜びを表す。

大体ラリーの期間があるんだし、その期間中に稼げば良いわけで。
本当に少しだけ、回って帰るつもりだったのだ。



が。

何でか見知らぬ鳥型の擬人化動物に襲われ。
遊園地を(当然)知らない秋雨にせがまれ、中で遊び。
大道芸人に手伝わされ。
迷子さんに道を教え。
図書館に入った秋雨が、本に没頭し(知識を得るのは良い事なんだが)。
川原で行われていた水切り大会に興味を示した秋雨が、飛び入り参加し。



これ何て言うトラップ?
………擬人研究所………ナメていた俺が馬鹿だった。



途中途中で、擬人研究所の職員のシオンさん、ヨウタさん、ハヤトさん、(滅多に会わない)ヨハンさんや、ショップの店長にも会って、手助けして貰ったり。






スタンプラリーを終えた。
………意外と疲れた………。






結果、秋雨が欲しがっていた景品がほぼ入手できた事を、ここに記しておく。



'11.11.29

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