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小説
And, it rainrs.2



つらつらと考えていたら、無性に彼に会いたくなった。

この雨では無理だろうけど。



ドンドンドン


誰かが訪ねて来たらしい。


(こんな雨の中、よく来たなあ。僕なら家にこもってるよ)


そう思いつつ、客人を迎え入れる事にした。


「遅い!! 風邪引いちまうだろうが!! このバカ!!」


客人は想い人の彼だったから、呆気に取られた。

会いたいと思っていたら、彼が家に来てくれた。


「ところで何しに来たんだい?」

「いいから入れろ」


彼を部屋の中に招き入れる。
彼はいつもの不機嫌な顔で、自分に紙袋を渡した。


「なんだい? これ」

「……………………」


答えてくれる気は無いようだ。
諦めて中を覗くと。


「……ねえ、アーサー。僕の見間違いでなければ、これ、君の手料理に見えるんだけど」

「……じゃあ、そうなんじゃないか?」


恐る恐る取り出してみる。



ちょっと待ってくれ。
これ………。



コーヒー・ウォルナットケーキにクランベリーのショートブレッドじゃないか!!
二つとも僕の大好物だ。
しかも、成功例!!


「アーサー? これ、成功してるよ? 君にしては珍しいね」

「自分用に作ったからな。当たり前だ」

「…じゃ、何だってわざわざ僕の家まで来たんだ?」


こんな雨の中。
天変地異の前触れかと、揶揄おうとした。






この後、爆弾が投下された。





今、彼は何と言った?


「え、っと………?」

「…だから!! 気が付いたらコレ作ってて!! お前の好物だったって思い出したら、お前に会いたくなったんだよ!! バカ!!」


それで勢い余って、本当に会いに来たと。
僕の大好物を忘れずに持参して。



ああ、なんて愛しい生き物なんだい、君は!!

愛しくて嬉しくて、堪らない。
君が勢いで行動したのなら、僕もそうしようじゃないか。



「ねえ、アーサー。僕は君が好きだよ。兄弟の愛情じゃないんだ。一個人として、君が好きなんだ」

「〜〜〜っれ、も」

「ん?」

「俺、も……同じ、だ」


暫くの沈黙。



信じられなくて確認したら、真っ赤な顔と潤んだ瞳に睨まれた。


「どうしよう、アーサー。幸せすぎて、泣けてきた」

「……バカ」


こうして、僕らは晴れて恋人同士になった。






今日はデートだったのに、生憎の曇り空。

アーサーの提案で、何処にも行かず僕の家でゆっくりしていた。

彼が煎れてくれている紅茶の薫りが漂ってくる。
僕は彼が持参してきたアップルパイを切り分けていた。

窓の外から聞こえてきた、小さな音。






そして雨が降る

僕らにとっては、幸せの雨


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