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小説
And, it rainrs.(ヘタリア:アルアサ)



―――雨は嫌いだ。
あの日を思い出すから。



窓の外を見て、アルフレッドは重い気分に陥った。

雨の日は嫌でもあの日を思い出させる。

兄と慕ったアーサーとの決別した雨の日。



彼は純粋に自分を弟と見ていてくれたし、育ててくれたけれど。

自分は彼より大きく育ち、彼を兄だと見れなくなった。



彼が欲しくなった。
一個人、アーサー・カークランドとして。

そうして、彼から離れたのだ。
それなのに。
彼は事ある毎に自分と衝突し、かといって突き放す訳でもなく(そこら辺は未だ兄としての甘さがある)。


「君は僕に、どうして欲しいんだい?」


彼への想いを秘めたまま、きっと会議で顔を合わせる毎に、嫌味の応酬をするんだろう。

すぐに想像できるだけに、苦笑を禁じ得ない。





自分が味覚音痴なのは、彼の所為だと思う。
あんな黒焦げスコーンを完食出来るのは、自分だけなのだと自負している。



実を言えば、彼はそんなに料理下手ではない。

ティータイムのケーキやパンは美味なのだ。
ショートブレッドやエクルスケーキ、ブラウニー。
マカロン、レモンケーキ、フラップジャック。
クグロフ、チェルシーパン、クランブル。
ヴィクトリアズ・タルト、マフィン、カスタードタルト。
ジンジャーブレッドケーキ、アプリコット・アーモンドケーキ。
コーヒー・ウォルナットケーキにキャロットケーキ。

クロワッサンやサンドイッチ。
野菜や肉を使ったキッシュ。

アフタヌーンティーの最後に出てくるクイーン・オブ・プディングスと、ヴィクトリア・スポンジ・ケーキ。

どれもこれも本当は、自称グルメを名乗るフランシスでさえも脱帽するのではないかと言う位、絶品なのだ。



それを知っているのは自分だけ。

だというのに何故失敗するのかという疑問に対し、彼は『誰かに食べさせる事に緊張するから』と答えた。

そうして出来上がる失敗料理。
つまりは、彼なりの愛情表現。


(まあ、そこが君らしいよね)


だからこそ、良かったと心底思うのだ。

フランシスやマシューにだって譲れない。
譲れるものか。

自分だけの特権だ。
あの料理を食べきれるのは。


それほど彼に溺れている。
年上で兄なのに、あの可愛さは何なんだ!?

たまに彼を抱き込めば、スッポリと腕の中に収まるし、彼が好む紅茶の香りがする。

彼はツンデレ海賊紳士だから、鉄拳制裁の後、逃げてしまう事が多い(極稀に逃げない時もある)。そこが可愛いのだ。








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