小説 オレと軍艦。 (※チーグルの森〜タルタロス) 『冥界よりも、より深淵にある地獄』を冠する軍艦。 地獄へなら、お前達だけで行け。 他人を巻き込むな。 チーグルの住処に戻った結果。 チーグルの長老がミュウを一族から追放した為、オレのペットになりました。 馬鹿だねー。 ミュウの報告、ちゃんと聞いてたよな? クイーンの「其方以外のチーグルは赦さぬ」って所。 「其方」、つまり、ミュウ以外のチーグルはライガにとって捕食対象だという事に気付いていない。 言語理解能力と危機管理能力低いでやんの。 ミュウは、お子様組の良い遊び相手に打って付けだと思うんだ。 今度『家』に行く時に、一緒に連れていこう、そうしよう。 「………聞いてますか?」 「必要性を感じない」 膝の上にミュウを乗せ、きっぱり言い切った。 『中』の二人が、うんうん、と頷いている。 兵士に囲まれて、陸上走行艦タルタロスに強制連行されたオレ(と襲撃犯)。 未だきっちりとマントを被っているオレは、さぞ不審者に見えるだろうが知った事か。 「ルーク!! 貴方、人の話はちゃんと聞いたらどうなの!?」 「………ルーク、ですか。貴方のフルネームは?」 無能め。 判っててやってやがる。 「オレはルーク・フォン・ファブレ。キムラスカ・ランバルディア王国のファブレ公爵の嫡子だ」 台詞と共にフードを取ると、王族特有の赤毛が流れ落ちる。 無能は、オレ達(襲撃犯含む)を解放し、自分達を知ってくれ、信じられるなら協力しろ、と上から目線で言いやがった。 オレが動けば何故か全員ぞろぞろついてくる。 うん、無理。 「一人になれる場所を」 「ルーク!! 我儘言わないで!!」 そーいや、コイツの所為でこんな所に居る羽目になったんだよな。 「煩い黙れ。病み上がりのオレと貴様は赤の他人だ。何故オレが貴様の言うことを聞かねばならんのか実に不思議だ」 「みゅ? ご主人様、御病気でしたの?」 「ああ。漸く熱も下がって、主治医の先生から起きて良いって許可貰ったばっかりだった。ところが其処の女が眠りの譜歌を以て屋敷に侵入。で、なんでか知らんが屋敷に居たグランツ謡将に攻撃。力負けした其処の女が、謡将に因って吹っ飛ばした先に居たオレと接触、気付いたらタタル渓谷だった訳だ。つーか痴話喧嘩………じゃ無かった、謡将の妹か。兄妹喧嘩なら余所でやれ。態々他人の屋敷に侵入してまでやるなこのド阿呆が」 淡々と事実を抑揚なく容赦なくぶつける。 一番最後に某不良バスケマンのライバルのフレーズが出たのはご愛嬌。 「貴様の所為で、どれだけ屋敷の使用人達が死んだか………」 「は? 私が使ったのは眠りの譜歌なのよ? 死ぬわけ無いじゃない」 「………人間は頭が重い為、頭から落ちる。鎧を着用している警備兵ならば、重い頭に更に兜を被っているな。打ち所に因っては良くて打撲、骨折。悪くて死亡。料理人は、怪我だけで済めば良いが、場所が場所なだけにコンロや包丁が在るな。火を使っていて、頭から落ちたら火傷は必至、または死亡。使用人は仕事内容に因るが、もし陶器などの割れ物を持っていたら、割れた破片で怪我をするのは必定。顔から突っ込んだら下手をすると失明かもな」 飽く迄も淡々と抑揚なく容赦無く事実を述べる。 血の気が引いていく襲撃犯なぞ知らん。 「そして屋敷に警備兵が居ると言う時点で、オレは貴族であり、また、彼等の護衛対象な訳だ。その護衛対象を護れなかった、その一点だけで首を切られる。退職または物理的にな」 「う、うそでしょう?」 「何が嘘なものか。………手紙が間に合えば良いが………イニスタ湿原に在ったらどうしよう」 彼等の死体。 ありゃ、マルクトの皆様も頷いているよ。一人を除いて。 襲撃犯は更に蒼白くなり、導師とスパイも蒼褪めている。 「使者殿。これだけ言っても解らないか? オレは貴殿等が一切信用に値しないから話なぞ端から聞いてないんだ」 「………と言いますと?」 マルクトの皆様、無能を奇異な物を見る目で見てますが。 何故気付かん。 「1から10まで説明せんと駄目なのか? 貴殿の部下達は理解している様子だが? では大雑把な例えをしよう。『ある日、マルクト皇帝が休憩中、他国の軍人に襲撃且つ疑似超振動により誘拐。辿り着いた先には、襲撃してきた軍人の組織のトップと敵国の軍人』。………まだ必要か? その連中に拉致監禁、または人質にされる恐れがあるからだ。だから仮令導師が居たとしても納得しこそすれ、信用など出来ない」 そこに居る襲撃犯を捕縛しない限りは。 いやうん、マルクト軍人の皆様、良い仕事ぶり。 襲撃犯を捕縛してくれました(無能達は除く)。 然り気無くエンゲーブに人を待たせていると言うと、引き返してくれました!! 無能が文句言ってたけど無視!! 早く会いたいよー。 '13.02.15 [*前へ][次へ#] |