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例えば
(伊綱)








例えばと彼女はふと考える。


今目の前に立つこの青年の名前を呼べばどうだろうか。


いつものように左側から振り向いて、その少し情け無く漂った視線を彼女に柔らかく向けるだろう。


彼の観察は面白い。
次の行動をひっそりと思い浮かべてカップを置く。

ありがとうと返事。
どういたしましてと彼女。



彼女はまた考える。



彼をすきだと思い始めたあのくすぐったい感覚を思い出す。


これは面白いかもしれない。



「生王さん」


「ん?」



彼女は子供っぽく笑う。

悪戯を計画した少女の様な純粋さが彼女にはまだある。



例えばですよ生王さん、


私が今あなたに唐突にすきだと言ったらそれは



なるべくならば幸福な暖かい未来へと繋がって行きますか?



そっと手を合わせる瞬間など幾らでもある


あなたが握り返してくれるかは、わからないけれど




それでも私は




「どうしたの?」


「ああー…」



やっぱり何でもないですと言ってしまうんだ。




「へんなの、」



「生王さん程じゃあ無いですから」



くすくすと笑顔を作ってしまう私はまだ少しだけ幼くて、勇気が上手く出せない。



わかって下さい、愛しいあなた








いつか、




















(それはきっと、真実の流れに乗って)













END.


あきゅろす。
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