イエロウ・パーカーG
げっとだぜ。その@
最後もやっぱりこの男。
「ねーってば、伊綱くん!」
「ちょ、来ないで下さい生王さん!…面白いから…!」
こんな調子で早1時間。生王と伊綱は、ソファーの回りを地味にぐるぐる歩いていた。
「…なんで逃げるの!てか紅茶飲みたいんだけど」
「なら涙目で追い掛けて来ないで下さいよ!」
今持って来ますから、と伊綱は早足で台所の方へと消えて行った。
…なんなんだもう。
あそこまであからさまに拒絶されると流石にショックで、生王はよろよろとソファーに座り込んだ。
「一体何が原因っ…て」
自分の着ているパーカーを見る。
「これだよなあ…」
結局弥勒から押し付けられる形で貰った。じゃあもらうよ有難うと返した時の彼の顔ときたら。
「…まるで子供みたいだ」
「―――どうぞ、」
テーブルに湯気をたてる紅茶が置かれた。
生王は一瞬戸惑った様に停まり、慌てて伊綱を見た。
「…ホットだ…」
「ええ。ホットです。駄目でしたか??」
「いや…でもこれホットに見せかけて実はアイスとか」
「そんなわけ無いでしょ」
「この湯気もドライアイスとか」
「黙りなさい」
伊綱は溜め息を吐いて、生王の席の向かい側にもう1つカップを置いた。
「…勿論、生王さんだけならキンキンに冷えたのお持ちするんですけどね…今日はそろそろ先生が帰ってくる予定なので」
そう言って、不意に玄関の方に目を向けた。
…………だだ…だ…
…だだだダだだダダダっ!!!
―――――バタンッ!!!
「うはっ!!」
取れんばかりにドアが開いたかと思うと、見慣れた人物が勢いよく飛び込んできた。
…伊綱くんも相当手慣れてきてるなぁ、と生王は1人呟いた。
だが彼女の読みもまだまだだったようで、奇声を振り撒く癸生川の姿に驚いた声をあげた。
「せっ…先生!?全身泥だらけじゃないですかっ!!」
彼はこれでもかと言うほどに汚れていた。いつもなら真っ白なワイシャツも土と泥で茶に汚れ、髪の毛には草や枯葉が刺さっている。
「わっ、だめですっ!!事務所せっかく掃除したのに!!」
伊綱のそんな言葉を無視して踊り続ける癸生川は、前転3回、側転2回、最後にヘッドスプリングを華麗に決めてから、
「見つけたぞ!!」
びし、とイエロウな生王を指差した。
「…はい??」
「探しに探したぞ!!森にもいない!!海にも山にもいない!!ふさぎこんで帰ってきたらなんだ!!」
どんどん生王に近付き、その度に目をきらきらと輝かせた。
「こんなところにいたではないか!!!」
がしりと彼のイエロウな肩を掴み、うははと高らかに笑った。
「ピカチュウ!」
―――――ゲットでちゅう!!!
《最終話に続く》
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