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イエロウ・パーカーE
旧友と久しぶりに会った青年M、
そして同じくイエロウを所持した青年R。












「やぁ、久しぶり」


玄関のドアを開けると、まあ前と大して変わりの無い弥勒の姿があった。


「…どうも」


仕事帰りなのか、だるそうに此方を見ると、僕の促す方向へと素直に歩いていく。


「何飲む??」

「ビール」

「帰り車だろ。却下」


やや睨まれつつ、彼の手の中のコンビニ袋を受けとる。


麦茶を出した。


「幕の内…」

「何だ、不満か」


もう少し肉っ気のあるものを期待していた。


「………別に」


小さなテーブルに2人分の弁当を置くと、それだけで一杯になる。


何時もの席位置に彼は座り、もう片手に持っていた紙袋をその隣に置いた。


「…??何、それ」

「言わない」


らしくなくにこりと微笑む弥勒が、怪しい。



「…いただきます」


とりあえず、食べ始める。


今日もテレビを付けるタイミングを、逃す。






「…で、弥勒。今日は何で来たの??」


箸を休めず、目の前の彼に問う。


「んー…、ほら、最近めっきり寒くなっただろ」

「…はあ」

「お前がまたどこかで生き倒れたりしてないかと思って」

「なんだそれ」


理由が…よくわから無い。
ただ単に顔が見たくなった、くらいでいいだろうに。


「お前昔からよくふらふらしてたから」

「ふらふらって……確かに優柔不断はよく言われたけど」

「冬場の公園はキツいぞ」

「問題そこなんだ…」


いきなり彼の箸が伸びてきて、僕が最後の為に残していた唐揚げを迷い無く盗られる。


「あっ!!ちょっ…僕のっ」

「やっぱカルビ弁当とかにするんだった」

「あああ!!唐揚げ…」


…一口だった。


「…そうやって何時も…高校時代からそうだ…」


好きなものを残す自分の性格を直さないのも悪い気がするが。


「高校時代ねぇ………お、そうだ。お前、大沢ってヤツ覚えてるか??」


完食した弁当をテーブルに置くと弥勒は言った。


「大沢…??あの体格よかった奴??」

「そりゃ男だろ。柔道部の。女だよ、大沢、あのー………サキ、だったか」


僕は薄れつつある高校時代のクラスメイトの顔と名前を頭に浮かばせた。


「…そんな子いなかったな…“お”の名字は僕と大沢くんしかいなかった」


よくいじめられたから覚えている。


「そうだったか…??結構美人で」

「だったら尚更忘れないんじゃない??」

「…そうだよな」


弥勒は暫く考えていたようだが、やがて「まぁいいか」と煙草を出した。


「あ、灰皿…」


そう言って立ち上がろうとした瞬間、こつんと肘にコップが当たり、


「あ」


「わ」


勢いよく、麦茶が僕の上着に溢れた。

夏ならいい。アイスだから。

でも…今は冬も間近な季節だった。


「うわっ!!あっつ…!!」

「お前…」


予想以上の熱さに焦る僕を捕まえて、弥勒は袖の濡れた上着を引っ張った。



「脱げ」

「わかったよ…って、そんなに引っ張るなっ」


弥勒は当然の如く命令口調で繰り返した。








「脱げ」











《続く》


あきゅろす。
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