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イエロウ・パーカーA
彩子。













その日の弥勒の機嫌の良さは、いつもとは桁違いだった。


「どうしたんですか、先生」

「…何が??」


そう聞き返す表情もどこか緩んでしまっていて、理由を知らない彩子にとっては不気味で仕方が無い。


そんな中、彩子は弥勒のデスクに乗せられている雑誌に目をやった。
手に取り、パラパラと捲る。


「先生、ゲームとかなさるんですか??」

「え、…ああそれ。もらって…いや、無理矢理昨日押し付けられた」


よかったらあげるよ、と言われても、生憎彼女にも興味が無い。


「どなたに戴いたんですか??」

「………」


弥勒は一瞬にして苦々しい表情になる。
ああ、この顔は正しく、あの探偵しかいない。


お化けマンションの一件で知り合った探偵…の顔を思い浮かべて、彩子も溜め息を吐いた。


最近テレビゲームに夢中になっているとは聞いていたが。


「懐かしいですね、これ。私が小学生の時に流行ってました」

「へぇ…そんなに前だったっけ」

「はい」


一番最後のページは、眩しくなるほどのイエロウだった。


「あ、これ…えーと、なんて言うんでしたっけ」


彩子はイエロウを指差して、うーんと唸った。

これは知っている。可愛くて、女子にも人気だったから。


「ああ、それなら」


弥勒はにやりと笑い、何やら紙袋の中からがさがさと取り出した。


―――イエロウの、パーカーだった。


「わ、まっ黄色」

「だろ??」


それは色もデザインも、雑誌のそれにそっくりだった。


「これを明日…アイツに」


見ものだぞ、と弥勒は煙草を取り出して火をつけた。








《続く》


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