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映画で君は何回死ぬの
誰かと待ち合わせする時、私は少し早めに着くようにしている。
それに特に理由はないが、早く来ないかなとか思いながら雑踏を眺め、一人流れに沿わず立ち止まってるのが好きなのかもしれない。それらはどこか余裕がある寂しさをくれる。

約束時間から秒針が一つでも進んだら帰ろうと思っていたが、
生憎秒針が時間を刻んだその瞬間に男は現れた。三時ぴったりのジャストだから文句も言えない。

「あの店から見てたけど随分早くから待っててくれたみたいだね◆そんなに楽しみにしてくれてたのかい」
「ちょ、見てたんなら来いよ。…まったく。で、結局何を見るつもりですか」
「じゃあそうだなァ、アニメとかいいかもね、丁度今ディズ「いやいや、それはやめておきましょう」
何故だか本能が危険を告げているから。
鼠は敵に回すべきではない。


結局、丁度やっていたコメディ映画を見ることになった。
わりと面白く、現に隣の男はさっきからくくくくうるさい、九九でもやっているのかと勘ぐりたくなるほどだ。意外にも沸点は低いようだ。


そして、映画館に灯りが再び灯った頃には男は笑い死にかけていた。


「社交辞令で一応聞きます。大丈夫ですか?」
「うーん、残念ながら駄目みたい◆だけどキミがあっついキスしてくれたら大丈夫になるよ、きっと」
「代わりにあっついお湯をかけてあげましょうか」
「◆」

まだうずくまったままの男を冷たい目で見ながら売店に行き、ミネラルウォーターのボトルを二つ買った。一本をヒソカさんに分けてやる。
映画料金を払ってもらっているわけだし所謂サービスというやつだ。

「アリガト☆しかしキミはなかなか笑わないねェ」
「ヒソカさんが笑いすぎなんですよ」
「だって熊に襲われた人が生きてるか死んでるかわからなかったから銃で撃って『これでわかりました。死んでいます』だって、もぅボク笑い死ぬかと思ったよ」
「…ブラックジョークはあまり好きじゃないんです」

何故かと聞かれて、だって残酷じゃないですかと答えれば、ヒソカさんは不思議そうな顔をしてキミは残酷じゃないのかいと聞いてきた。




私は質問には答えないまま
ミネラルウォーターのキャップを捻った。


分かりきってることをわざわざ聞くなんて、嫌な人だ。



映画で君は何回死ぬの
(残酷だからこそヒトはここまで進化したというのに)

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