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:だいだい色はとまらない


あなたの髪の毛はいつも、晴れの日だろうと曇りの日だろうと、明るく金色を輝かせている。堂々とした金色。


金髪が揺れた。
風がふいている、ゆるく、春が近いにおいがした。

空はオレンジ色に、群青色が交じりはじめて、夜へと僕らを連れ去ろうとしている。
屋上からまっすぐ見上げた天井はそんないろ。向こうに見える半分沈めた太陽はまだ橙を名残惜しいように強く発して。

会話は、ないのに、盗み見た横顔は苦を滲ませるでも暇そうにあくびを堪えるでもなく、僕と空を仰いだり下界を見つめたり、いつもの。

寝転んだまま、移り変わる空を眺めているとずっとここにいるのに、何だかどこか違うところに知らない間に来てしまった気分になる。
あるいは取り残されたような。
眠くなってきてふあ、とあくびをしたら、金髪がまた揺れてディーノがこちらを向いた。
隣であぐらをかいていた足を崩して、僕の横に転がる。


「…暇なら帰れば」

「帰って欲しくないくせに」

「五月蝿いな」

ふたりして夕焼けを見上げているのがはずかしくなって上体を起こした。

「きれーだなあ。もうすぐ夜だ」

目を細めてひとみがとろけて、笑む。
食事をするときも寝起きであろうとつねにべらべら何か喋っているかと思えば、こうして黙って想いにふけっているディーノが好き。
出会った頃は欝陶しかった薄い唇もだらし無い笑顔も、以前は大嫌いだったあなたが今は好き。

上に向けて翳した掌に自分のそれをちょんと重ねたら、何も言わずに握りかえされた。

そのまま手の甲に唇が触れて。
自分の手の甲にまで嫉妬してしまいそうなほどその唇が好き。

愛してる。と呟いた吐息を感じたくて、藍色に替わりつつある夕暮れを背に、顔を擦り寄せた。
溢れ出して止まらない想いは橙色をしていた。







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